塩の道をたどる旅~奥三河・南信州紀行

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 ▲豊田市足助町(あすけちょう)の旧市街に伸びる小さな路地、マンリン小路
足助といえば香嵐渓(こうらんけい)の紅葉が有名なところだが、昔ながらの街並みも隠れた見どころだ。

先週の土曜日は、愛知県の北東部から長野県の南西部にかけて伸びる国道153号(飯田街道・三州街道)をドライブしてきた。
江戸時代から名古屋と信州を結ぶ大動脈だったこの街道は、三河湾で採れた塩を信州まで運ぶ、いわゆる「塩の道」だった。そんな背景から、沿道には足助(あすけ)稲武(いなぶ)など、昔から繁栄した宿場町が点在している。一方、長野県側の根羽(ねば)平谷(ひらや)は標高1,000m級の高原地帯で、さわやかな気候と豊かな自然を楽しむことができる。名古屋から手頃に田舎に遊びに行きたければ、まさに持ってこいのエリアなのだ。
そんなわけでこの日は、名古屋市内から東山通りを東進し、長久手グリーンロードへ。愛・地球博記念公園を横目に見つつ、そのまま有料道路の猿投(さなげ)グリーンロードに突入する。ETC割引のおかげで、通常400円のところがなんと280円だ。
終点の力石(ちからいし)ICを降りると、ようやく国道153号(飯田街道)に合流。そこからさらに10kmほど走れば、いよいよ最初の目的地、足助に到着だ。

豊田市百年草
 ▲まずは足助の街外れに立地する豊田市百年草という飲食・物産・宿泊・入浴の複合施設へ。
当初はここから歩いて街道巡りをしようと思っていたのだが、玄関先にレンタサイクルが並んでいるのを発見。これはもう利用しない手はない。しかも、料金はなんと無料。せっかく綺麗な自転車なのに、あまり広報されていないのか、利用する人は少ないようで、なんだか勿体ない。

ということで、百年草から自転車で西に向けて出発。ほどなくして県道33号と分かれ、足助川の北側を通る細い道が旧飯田街道だ。
足助市街の飯田街道は、東から順に親王町、新田町、田町、本町、新町、西町、宮町、松栄町という通称地名が付いており、このあたりは親王町(しんのうちょう)になる。車のすれ違いも難しいほどの狭い田舎道だが、ところどころに古い民家や大きなお寺が点在し、昔からの街道であることをアピールしている。
まっちの街歩きホームページでも紹介しているように、足助には2年前の秋にも訪れているのだが、そのときは夕暮れが近かったのとあまり時間がなかったので、新田町より東には行かなかった。なので、このあたりは初めて見る風景だ。

しばらく走ると国道153号の旧道と交差し、そこからは新田町(しんたまち)となる。このあたりからぽつぽつとお店が増えてきて、中心街に近づいてきたことを感じさせる。
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 ▲通り沿いに立っていた新田町商店街マップ。地域の人々の街への愛着が感じられる。

同じ足助町内でも、香嵐渓に近い西部の宮町や西町には観光客向けの土産物屋が多いが、このあたりはあくまで地元の人向けといった雰囲気だ。足助まつりが近いためか、祭りの準備をしている方々も見受けられた。

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 ▲新田町からさらに西へ進み、お釜稲荷の大きな赤い鳥居の前を通り過ぎると田町(たまち)
ここは「足助銀座通り」ともよばれ、かつては町内随一の繁華街だったところだ。わざとらしく観光地化されたりせず、どこか懐かしい生活感の残る商店街だ。さりげなく立っている旧型ポストもいい。

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 ▲途中、田町の通りの中程にある資料館、「足助中馬館」に立ち寄った。
入館は無料で、主に足助の商業・金融・交通・町並などが紹介されている。特に、街道や市街地の発達に関する展示は個人的になかなか興味深かった。1912年に建てられたというこの建物は、もともと稲橋銀行足助支店として利用されていたもので、建物自体が県の文化財に指定されている。銀行だっただけあって、建物の奥には金庫もそのまま残っていた。

また、田町の西端のあたりには、「井筒亀(いづがめ)」という老舗の料理店・精肉店があり、「香嵐渓名物 シシコロッケ」と書かれたのぼりが立っていた。これはちょっと気になる。後でまた来ることにしよう。

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 ▲田町にも商店街マップがあった。このあたりは個性的なお店も多く、歩いているだけで楽しい。
この他にも、足助の街中にはあちこちに手作りの看板が設置され、地域の人々の観光への熱い取り組みが感じられた。

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 ▲続いて、田町の西に位置する本町(ほんまち)へ。
ここも旧飯田街道の一部だが、1つ上の商店街マップを見るとわかるように、先ほどの田町との間で道路はクランク状に屈曲している。旧街道でよく見られる「枡形」とか「かぎ曲がり」と呼ばれるもので、防御のためにあえて見通しを悪くしたのがその由来だ。
また、冒頭の写真で紹介した「マンリン小路」は、この本町の西端にある。この小路の坂を上るとさらに名もない路地が続いていて、そこには地元の方が制作されたカラクリのおもちゃが展示されていた。古い街並みとマッチして、ほのぼのと心温まる光景だ。

さて、上の写真の右端に写っている平入りの屋敷(田口家)では、「足助の町並み 芸術さんぽ」という期間限定のちょっとしたイベントが行われており、観光客がたくさん集まっていた。どうやら「オトクジ」というくじ引きをやっているようで、くじに書かれている番号と地図を手がかりにお店を探して行くと、それがサービス券になるらしい。地元の人々が頭をひねって考えた企画なのだろう。

試しに私もくじを引いてみたら、偶然にも先ほどの「シシコロッケ」が20円引きになるというもの。ということで、さっそく「井筒亀」さんにやって来た。1887年創業のこのお店、当時は挙母(ころも:現在の豊田市中心部)や根羽方面からも来客があったそうで、4代目となった現在も足助町内では有名なお店の一つだ。

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 ▲これが香嵐渓名物・シシコロッケ。写真では味をお伝えできないのが残念だ。
肉屋のコロッケというだけでもよだれが出そうになるのに、これはなんとイノシシ肉入り。クセもなく、期待を上回る美味しさだった。レトロな店内ではちょっとしたお惣菜もたくさん売られていて、また来たくなるような懐かしいお店だった。

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 ▲最後に、新田町の大観音城跡の展望台から眺めた足助市街全景。山の懐に抱かれた小さな田舎町という表現がぴったり当てはまる風景だ。

このあたりでそろそろ足助とはお別れし、再び国道153号を北東へ。伊勢神トンネルを抜けると稲武の街があるが、ここは何度も訪れているので今回は素通りし、そのまま長野県に突入。

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 ▲最初に立ち寄ったのは、長野県最南端の村、下伊那郡根羽村(ねばむら)だ。
矢作川(やはぎがわ)の源流に位置するこの村もまた、三州街道(飯田街道の長野県側からの呼称)の宿場町のひとつ。足助や稲武と比べると非常に規模は小さいが、中心部にはこぢんまりとした街並みがある。

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 ▲根羽中心部の旧三州街道。ちょっと寂しい光景だが、昔はもっと賑やかだったのだろうか。

根羽の中心部は上町(かんまち)、下町(しんまち)、坂町(さかまち)の3つの町からなり、上の写真のあたりは上町になる。
よく見ると、電柱には足助の動物病院の広告看板がある。ここから足助までは約40kmの道のりだが、そこまで行かないと動物病院が無いということか。動物だけでなく、人間用の総合病院もやはり足助まで行かなければ無い。田舎暮らしには憧れるが、これくらいの不便は覚悟しないといけないということだ。

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 ▲根羽の中心部を流れる矢作川。河口部は巨大だが、源流はこんな渓流の風景だ。

さて、この根羽には「ネバーランド」という名前のドライブインがあり、一旦そこに立ち寄る。なんともベタベタなネーミングだが、ここのソフトクリームはめちゃくちゃ美味しいのだ。この方面に来たときは必ずここでソフトクリームを食べるのがお約束になっている。お土産には牛乳やヨーグルトも売っているが、これらも人気だ。

国道153号に戻り、さらにしばらく進むと、隣村の平谷村(ひらやむら)に入る。ここも三州街道の宿場町だったところで、旧街道沿いには小さな旅館や民宿が点在している。
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 ▲平谷中心部の旧三州街道。今では営業しているお店も少なく、「しもたや」風の民家ばかりだ。平谷はひまわりで村おこしをしているらしく、ひまわりの飾りの付いた街灯が可愛らしい。
この平谷の中心街にも、向町(むかいまち)、新町(しんまち)、中町(なかまち)、中平(なかだいら)、西町(にしまち)、旭町(あさひまち)といった通称地名があり、上の写真は中町にあたる。お彼岸を過ぎて、もう日が傾いてきたのが気忙しい。時間もあまりないので、ささっと通り過ぎるだけにした。またじっくり訪れることにしよう。

この後、道の駅信州平谷に隣接する「ひまわり市場」の中の「高嶺そば」へ。信州といえばやはり蕎麦だ。

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 ▲蕎麦と五平餅(ごへいもち)のセット
五平餅というのは、潰してこねた米を固めて餅にし、味噌と砂糖などを合わせた甘辛いタレをかけて焼いたものだ。愛知県東部から岐阜県東部、長野県南部のあたり一帯にかけて伝わる郷土食で、名古屋近隣の人にとっては非常に馴染み深い食べ物だ。ご飯というよりはおやつといった感覚だが、米の固まりなのでお腹はよく膨れる。

腹ごしらえをしたところでさらに国道153号を北上し、治部坂(じぶざか)高原に立ち寄ってから帰ることにした。高原らしく、夕方になると急に寒くなり、外の温度計は10℃を指していた。少しずつだが、もう紅葉も始まっていた。

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 ▲最後に日帰り湯の治部坂温泉 宿り木の湯へ。
先ほどの道の駅の隣にも「ひまわりの湯」という大型の温泉があるが、こちらはかなりこぢんまりとしていて、ちょっとマイナーな(失礼!)存在だ。しかしその分、落ち着いた雰囲気でゆったりとくつろぐのには向いている。温泉は普通のお湯のようなさらさらとした湯だったが、アルカリ性の泉質のためか、肌がつるつるになった。

※追記(2013/9/16):「治部坂温泉 宿り木の湯」は2010年3月末日に一時休業、2010年5月から営業再開、その後2011年5月に廃業されたようです。

この後は国道153号をしばらく北上し、園原ICから中央道へ。恵那山トンネルを抜けて岐阜県内を通り、ETC割引の1000円で帰って来た。ちょうどこの日はあいちトリエンナーレの「スペクトラナゴヤ」が行われていて、中央道の小牧東ICのあたりから幻想的な光の柱が真正面に見えた。

休日にちょっと足を伸ばしただけの旅行だったが、久しぶりに気分転換ができて良かった。あと2ヶ月もすれば紅葉のシーズンになり、渋滞も激しくなってくるだろうが、あえてシーズンを外してこんなふうにのんびり楽しむのもいかがだろうか。
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Comment

はじめまして

今までも町歩きの力作を拝読させていただいていたのですが、初めてコメントします。
私も今ではぶらっと町を歩くのが趣味になりました。何箇所はまっちさんの記事を参考にさせていただいております。

足助のシシコロッケ、私も一度食べてみたいです。

初めまして。ぞうさんのブログは私も時おり拝見してます。
なんだか眼の付け所に共通したものを感じます。
足助は何度行ってもいいところですよ。地元の人が地域おこしに熱心だからでしょうか。
シシコロッケも本当にオススメです。ぜひ街を歩きながらどうぞ。
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