韓国の汽車旅 東海南部線編

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KORAIL東海南部線 海雲台(ヘウンデ)-松亭(ソンジョン)間の車窓より。

(前回からの続き)

韓国旅行の二日目、2009年12月19日(土)。
この日は釜山から東海南部線(トンヘナンブソン)というローカル線の列車に乗り、慶州(キョンジュ)という街を目指した。釜山から慶州へは高速バスの方が本数が多く便利だが、ここはあえて風情のある「汽車旅」をしてみることにした。

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▲韓国の国鉄(KORAIL)の大まかな路線図。今回の旅行に関連する路線だけを記載しています。
この地図では便宜上「釜山」とひとまとめにして書いてあるが、実際は京釜線と東海南部線は別々の駅から出ている。前者は釜山駅、後者は釜田(プジョン)駅だ。

この日の朝は、ホテル東横イン釜山中央洞でバイキングの朝食をとり、ホテルの送迎バスで釜山駅に向かった。朝食はキムチが付くところを除けば日本のビジネスホテルとほぼ同じラインナップだった。

そして釜山駅から地下鉄1号線に乗り、釜田駅にほど近いところにある釜田洞(プジョンドン)駅で降りた。前回の記事でも書いた通り、釜山駅と釜田駅を直接結ぶKORAILの列車は設定されていないので、このように地下鉄などで移動する必要があるのだ。途中の西面(ソミョン)駅は乗換駅で、ソウルの地下鉄と同様に民族音楽のような乗換メロディが流れた。
釜田洞駅は土曜日の朝ということもあり閑散としていたが、地上に出てみると釜田市場の商店や露店がもう営業していて、朝から賑やかだった。

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▲釜田洞駅1番出口前で。昔ながらの商店と、背後にそびえ立つ高層アパート群の対比が面白い。

釜田洞駅から、釜田広場路という広い道路を200mほど歩くと、KORAIL釜田駅に突き当たった。ここは前日に訪れたばかりだ。

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釜田駅の構内。釜山の第二のターミナルという割にはこぢんまりとしている。

以前、電鉄と一般列車の話をしたが、韓国の一般列車は発車時刻の直前にならないとホームには入れないので、それまではこの待合室で待つことになる。最初はがらんとしていたが、発車時刻が近付くと徐々に人が増えてきた。比較的マイナーな路線だが、観光地の慶州に向かうためか、日本人の姿もちらほらと見かけた。
そして発車時刻の15分ほど前になるとホームに通じる扉が開いた。しかし間に改札らしいものは存在せず、料金の支払いは全て乗客の良心に委ねられている。前回(2009年2月)韓国に来たときにはまだ自動改札機が設置されていたが、その後、信用乗車制に改められたのだそうだ。

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▲釜田9:00発セマウル号(1054列車)ソウル行き。これから乗るのはこの列車だ。

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一般室車内。若干古さが目立つものの、内装は豪華で、シートの間隔も日本のグリーン車並みだ。

車内ではカヤグムのゆったりとしたBGMが流れていて、これから始まる汽車旅への期待感を盛り上げてくれる。が、よく聴いてみたら、なんと中島美嘉の「雪の華」ではないか。朴孝信(パク・ヒョシン)によってカヴァーされ、韓国でも人気のある曲だということは知っていたが、もともとが日本の歌なだけに何だか不思議な感じだ。


KORAILの列車の停車中の車内放送。43秒ごろから「雪の華」が流れる。
この音声は東海南部線ではなく、この3日後に乗った東大邱発江陵行きのムグンファ号で録音したものだが、BGMは同じなので、韓国の列車の雰囲気をこれで味わってください。

「雪の華」が流れ終わると、次はThe Beatlesの「Let It Be」(カヤグムアレンジ)が流れ始めた。この2曲はこの後も韓国各地で列車に乗る度に何度か耳にしたので、今聴いても韓国での汽車旅を鮮明に思い出す。


停車中の車内放送BGM、「Let It Be」。同じく東大邱発江陵行きのムグンファ号で録音。
長いので、適当に聴き流しながら読み進めてください(笑)

そんなわけで、セマウル号1054列車は定刻通り、9時ちょうどに釜田駅を出発した。沿線には、日本ではもはや珍しくなった電鐘式の踏切が多く、車内の雰囲気とも相まってとても懐かしい雰囲気だ。
釜山の市街地の中を縫うように走り、しばらくすると「海雲台(ヘウンデ)警察署」という建物が見えた。海雲台というのは釜山東部にある海に面したリゾート地だ。映画「チング」でも、この海雲台警察署が名前だけだが登場している。
やがて、1つ目の海雲台駅に停車。ここは全ての旅客定期列車が停車し、終始発列車も設定されているのだが、その割には小さな駅だった。駅舎は八角形の屋根の独特な建物だったが、後述するように数年後には駅自体が移設され、この駅舎も取り壊されてしまうようだ。

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▲そして海雲台駅を出ると、広大な東海(日本海)が眼下に広がった。

東海南部線のうち、釜田から蔚山(ウルサン)まで約50kmの区間は、2015年ごろを目処に電鉄化が計画されている(一般列車と電鉄の違いについてはこちらを参照)。もし実現すれば、ソウル近郊以外では唯一の電鉄となる。しかし中央線と同じように、電鉄化に際して線路の移設・直線化が行われ、このあたりはトンネルでぶち抜くルートに変更されるという。この景色もあと数年で見納めかもしれない。

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松亭(ソンジョン)駅付近で。今は冬なのでひっそりとしているが、夏に来たらさぞかし賑やかなことだろう。

松亭駅を過ぎると海雲台区から機張郡(キジャングン)に入る。と言っても、韓国の広域市では区と郡が並立していて、機張郡も釜山広域市の中に含まれる。このあたりからしばらくは田舎の景色が続いた。
韓国の田舎の景色は、日本の田舎の景色に本当によく似ている。が、何かが違う。どこが違うのだろうかと考えながら眺めていたら、ところどころに高層アパートが見えること、レンガ造の建物が多いこと、そして建物が全体的にカラフルだということに気が付いた。ということは、韓国人が日本に来たら、地味な建物ばかりだと思うのだろうか。

しばらく山あいを走り、再び平地に出ると、徐々に大規模な工業地帯が見えてきた。そして、少しずつ街が現れ始めたところで蔚山駅に停車した。蔚山は人口約110万人の広域市(日本の政令指定都市にあたる)で、東海南部線沿線では釜山に次ぐ大都市だ。蔚山までは空いていたが、蔚山からどっと乗ってきて、座席が半分以上埋まった。

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蔚山駅付近の風景。駅のすぐ手前まで田園風景が続いていたが、駅の付近だけが都会だ。
何だかやたらだだっ広い風景で、まるで上海のようだ(行ったことないけど)。少し離れたところには観覧車も見える。どうやら蔚山駅は蔚山市街の外れの方に位置するらしいということを後から知った。

蔚山駅を出るとすぐにまた田舎の景色になった。なんだ、広域市の割に市街地は小さいんだな、と思ったが、しばらくすると再び高層アパート群が現れ始め、虎渓(ホゲ)というニュータウンのようなところにある駅に停車した。

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虎渓駅周辺の高層アパート群。

虎渓を出ると、再び日本の田舎によく似た景色が続いた。古都の慶州に近いためか、どことなく奈良盆地に似ているようにも見える。
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入室(イプシル)駅付近で。のどかだ。

やがて、韓国らしい反り返った瓦屋根の建物が増えてきた。徐々に慶州に近付いてきたことを感じさせる。
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▲慶州の1つ手前、東方(トンバン)駅付近で。景観を調和させるためか、このあたりはガソリンスタンドにまで取って付けたような瓦屋根が付いている。
ちなみに東方駅は文献によっては「東方信号場」となっているが、駅舎もあり、看板にも「東方駅」と書いてあった。最近になって格下げされたのだろうか。

東方駅を過ぎ、徐々に田園風景から市街地の風景に変わってくると、ほどなく慶州駅に到着。釜田から1時間40分ほどの旅程だった。


慶州駅到着時の車内放送。セマウル号では、駅に到着するたびにほのぼのとしたBGMが流れる。こういうのを聞くだけで旅情を感じてしまうのは私だけだろうか?
우리 열차는 잠시 후 경주역에 도착하겠습니다. 두고 내리는 물건이 없도록 미리 준비하시기 바랍니다.(ウリ ヨルチャヌン チャムシ フ キョンジュヨゲ トチャカゲッスムニダ. トゥゴ ネリヌン ムルゴニ オプトロク ミリ ジュンビハシギ バラムニダ./この列車はまもなく慶州駅に到着します。忘れ物がないようにあらかじめ準備なさってください。)
We shall arrive at Gyeongju Station in a few minutes. Please gather your belongings, and check to make sure you have not left anything behind.
안내방송 드립니다. 우리 열차는 잠시 후 경주역에 도착하겠습니다. 경주역에서 내리실 고객님께서는 소지품을 두고 내리지 않도록 미리 준비하시기 바랍니다. 고맙습니다.(アンネバンソン トゥリムニダ. ウリ ヨルチャヌン チャムシ フ キョンジュヨゲ トチャカゲッスムニダ. キョンジュヨゲソ ネリシル コゲンニムケソヌン ソジプムル トゥゴ ネリジ アントロク ミリ ジュンビハシギ バラムニダ. コマプスムニダ./案内放送を申し上げます。この列車はまもなく慶州駅に到着します。慶州駅で降りられるお客様は、所持品を置いて降りないよう、あらかじめ準備なさってください。ありがとうございました。)

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乗ってきたセマウル号と、慶州駅ホーム。下車客はかなり多く、半分くらいの人が降りたようだ。

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慶州駅構内。日帝時代(日本統治時代)の1936年に建てられた、歴史ある駅舎だ。
いかにも古都の駅らしい落ち着いた雰囲気で、ああ、慶州に来たんだなあ、という感慨を抱く。

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慶州駅外観。古都・慶州の観光はここから始まる。
ちなみに韓国語では「駅舎」と「歴史」はどちらも「ヨクサ(역사)」というので、「歴史ある駅舎」は「역사 있는 역사(ヨクサ インヌン ヨクサ)」となる。

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さすが観光地だけあって、慶州駅には日本の駅と同じようなスタンプも置いてあった。大きさは日本のそれと比べるとやや小さめだ。「慶州駅 年 月 日」と書いてある。

ということで、いよいよ慶州に到着。次回は慶州市内の世界遺産を巡ります。

(続く)
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