釜山 その1~朝からディープな街歩き

(前回からの続き)

2009年12月18日。
関釜フェリーで朝の釜山港に到着した。
韓国に来るのは10ヶ月ぶりにして2度目。霧が濃かった前回とは対照的に、雲ひとつない青空だ。
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▲初めて訪れる街、釜山。ソウルに次ぐ韓国第二の都市であり、日本に最も近い街でもある。
写真は釜山市街を南北に貫く主要道路、中央路(チュンアンノ)。この下を地下鉄1号線が通っている。

まずはホテルに立ち寄り荷物を預けてから、KORAILの釜山駅にやって来た。
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KORAIL釜山駅。2004年にKTX(韓国版新幹線)の開業に合わせて建て替えられたらしく、ソウル駅によく似たデザインだ。旅行中に何度も訪れた駅なので、この光景も馴染み深くなった。

今回の旅行では、韓国の鉄道(KORAIL一般列車のみ)の全線が乗り放題となる、外国人専用のフリーパス「コリアレールパス」(KRパス)を利用することにしていた。5日間で約1万円と、日本の青春18きっぷと同じくらいの値段だが、こちらはセマウル号・ムグンファ号だけでなくKTXも乗り放題なのでとてもお得だ。
あらかじめ日本の旅行代理店でバウチャーを購入し、この釜山駅で引き換えようと思っていたのだが、なんとアホなことに先ほどホテルに置いてきた荷物の中にバウチャーが入っていることに気が付いた。着いて早々からさっそくこんなんでは先が思いやられるが、幸いにも使用開始予定日は翌日なので、夜にまた来ることにした。

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釜山駅前風景
釜山駅はどちらかと言うと街外れに位置するので、駅の周辺には若干オフィスビルがあるものの、真正面には低層の住宅街が広がっている。正面に見える山は水晶山(スジョンサン、左)と亀峰山(クボンサン、中央)。そして駅の反対側はすぐに海だ。釜山の街は、山と海に挟まれた細長い平地に広がっているのだ。

せっかくなので駅の構内をしばらく散策し、ついでにKORAILの全線時刻表(5,000ウォン)も購入した。これは後々に役に立つことになった。
1階には食堂街があり、粉食店やカフェに並んで「간사이 라멘 돈가스(カンサイ ラーメン トンカツ)」という日本食の店があった。韓国で食べる日本食とはどんなものなんだろうか。ちょっと気になる。それにしても「カンサイ」って…。日本にある韓国料理店がよく「釜山」とか「明洞」とか名乗っているように、韓国にある和食の店も「オーサカ」とか「サッポロ」とか「ナゴヤ」とか、どうでもいいような日本の地名を付けているところが多い。

そして釜山駅の構内では、案内放送が流れるたびに「♪サランウル ジョナセヨ~(コレイル)プサンヨギムニダ~/♪사랑을 전하세요~(코레일)부산역입니다~/♪愛を伝えてください~(KORAIL)釜山駅です~」という短いロゴソングが流れていた。最初は釜山駅のオリジナル曲かとも思ったが、駅名の部分を入れ替えただけの全く同じ曲が大邱駅や東大邱駅でも流れていた。


▲これが東大邱(トンテグ)バージョン。
「♪サランウル チョナセヨ~(コレイル)トンデグ ヨギムニダ~/♪사랑을 전하세요~(코레일)동대구역입니다~/♪愛を伝えてください~(KORAIL)東大邱駅です~」

もしかしたら…と思いながら韓国中を旅行していたら、釜山、大邱、東大邱以外にも、ソウル、龍山、栄州、堤川、亀浦など韓国中のあちこちの駅でこの曲がアナウンスとともに流れているのを確認した。一体どれだけのバージョンがあるのか。日本文化センターのCMみたいだ。
ちなみに前回(2009年2月)韓国に来たときは、案内放送の前には3点チャイムが流れていたが、このロゴソングはどうやらそのチャイムの代わりに流れるようになったようだ。

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地下鉄釜山駅の9番出口で。
一見平和そうに見える韓国だが、北との戦争はあくまで「停戦中」という扱いであり、現在も準戦時体制にある。そのため、地下街や地下通路などは有事の際に避難するための待避所(대피소/テピソ)に指定されているようで、このような標識をあちこちで見かける。
が、よく見ると棒がいくつか書き足されて「턔파쇼(ティェパショ)」になっている。どこの国にもこういうくだらん落書きをする人がいるものだ。これもある意味、平和な証拠か…。

ところで朝食をまだ食べていなかったので、釜山駅前のキムパプ天国(김밥천국)草梁店に入った。
キムパプ(キンパ)というのは日本の巻き寿司によく似た食べ物で、韓国人にとっては最もポピュラーな軽食である。ただし日本の巻き寿司と違って、酢飯ではない普通のご飯を使っている。このキムパプをメインに扱っているファーストフード感覚のチェーン店が、このキムパプ天国だ。
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野菜キムパプコギマンドゥ(肉餃子)。味噌汁とカクトゥギ(大根のキムチ)、たくあんが付く。
どれも日本人にとっては親しみやすい味だ。特にマンドゥは日本の水餃子によく似ていて、とても美味しかった。キムパプ以外にもさまざまなメニューがあり、チーズラーメンなんていうのもあった。一体どんな味がするんだろう。

店内を見渡すと、「キムチは国内産です」とあちこちに書いてあった。韓国以外にキムチを作っている国なんてあるのかと不思議に思ったが、後で聞いた話によると、ここ最近は中国産のキムチがたくさん出回っているそうだ。国内産よりも安いんだとか。ここらへんの事情は日本とよく似ている。
ちなみにこのキムパプ天国以外に、キムパプナラ(キムパプの国)、キムパプマウル(キムパプの村)、キムパプチング(キムパプ友達)、キムパプサラン(キムパプ愛)、キムパプヨヘン(キムパプ旅行)、キムパプイルボンジ(キムパプ一番地)などといった類似店がそこらじゅうにある。パクリだ何だと言っていちいち騒ぎ立てることもないようで、それくらい一般的な食べ物ということなのだろう。

続いて、釜山駅の西側一帯に広がる草梁洞(チョリャンドン)という地域にやって来た。このあたりはかつて清国の租界(清館)があったため、中華街になっているようだ。韓国に上陸していきなり中華街というのも変な話だが…。
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上海街(상해거리/サンヘゴリ)。
思ったよりも寂れている。行政によって一生懸命町おこしが行われているようで、中華風の門や街灯が設置されてはいるのだが、それも虚しく閑散としている。中華街といえば世界中どこにでもあるものだが、とある事情から韓国には中華街らしい中華街がほとんど存在しないのだそうだ。

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▲中央路の1本西を並行する外国人ショッピング通り。昔は草梁洞テキサス通りと呼ばれていたらしい。
ここも一応中華街として位置づけられているのだが、現在はロシア人街と化しているようだ。中国のお店も無いわけではないが、完全にロシアに圧されている。街灯や装飾によって頑張って中華街として演出しているのに、皮肉にもロシア語の看板ばかりで、それを取り巻くように英語とハングルが氾濫している。もはやどこの国に来たのかわからなくなりそうだ。

ちなみにこのあたり一帯はかなり治安が悪いらしく、ガイドブックの類を見ると夜は近付かない方が良いと書いてある。訪問は自己責任で。何らかの被害に遭われても当ブログは一切の責任を負いません。

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▲中華街?の南側に隣接する瀛州市場(ヨンジュシジャン)
こちらはごく普通の韓国人向けの雰囲気だ。日本ではあまり見たことのない、独特な形状のアーケードが設置されている。朝早かったためか、開いているお店は少なかった。

再び中央路を南下し、中央洞駅前にある釜山郵便局にやって来た。
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釜山郵便局。さすがに350万都市の中心に建つ郵便局だけあって、大きな建物だ。
何しに来たのかと言えば、そう、旅行貯金をするためだ。と言っても、もちろん日本の通帳は使えないので、まずは通帳を作らなければならない。幸いにも窓口は空いていて、局員さんもとても親切な方だったので、たどたどしい韓国語ながらも何とか口座を開設することができた。韓国での旅行貯金については、詳しくはこちらをご覧ください。

ついでに、日本の友人・知人に送るための年賀状も買った。韓国から日本に送る場合、葉書は1通350ウォン、封筒は520ウォン。どちらにしても日本国内から送るより安いので、今回は韓国から出すことにした(ケチったわけじゃないですよ)。皆さん、無事届きましたか?
ちなみにこの郵便窓口の局員さん、郵便局なのになぜか「チョン・ハンウ ケーキ」と書かれたケーキ屋の紙袋に封筒を入れてくれた。なんていい加減な…。

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▲釜山郵便局の裏手には、こんな白いポストがあった。日本の丸型ポストに似ているが、もしかしたら日帝時代(日本統治時代)のものだろうか。
右下の解説板には、「“空に送る手紙”ポスト」「このポストは、今は空の国に行っている会いたくても会えない懐かしい人に送る文章、行きたくても行けない切ない事情、避難時代を回想して浮かび上がる昔話、すべての郷愁と哀歓を込めた手紙を入れることが出来る“空に送る手紙”ポストです」と書いてある。
実は、このあたりは朝鮮戦争当時に避難民が集まっていたところなのだ。

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40階段と呼ばれる階段。遊歩道として整備されている。
朝鮮戦争当時、臨時首都となった釜山には全国から大勢の避難民が集まり、着るものも食べるものも住む家も不自由なまま戦火の中を過ごしていたのだという。この40階段には、当時の生活を象徴した銅像があちこちに立っていて涙を誘う。しかし今では本当に何でもない街中の風景になっている。
通り沿いにはなぜか線路や踏切が設置してあり、何だろうと思ったが、どうやらかつて路面電車が走っていた記念のモニュメントらしい。昔は釜山のほかソウルにも路面電車があったようだが、ともに廃止され、現在の韓国には路面電車というものが存在しない(北朝鮮の平壌と清津にはあるらしいが)。日本では環境保護やバリアフリーの観点から路面電車が見直されつつあるが、韓国では路面電車の復活運動とかは無いのだろうか。

続いて、ロッテ百貨店光復店(롯데백화점 광복점)にやって来た。
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光復店は、ロッテ百貨店創立30周年の節目に30店舗目として、この前日(12月17日)にオープンしたばかりだ。なんともタイムリーなときに来たものである。
さらにこの建物の奥には、高さ512m120階建てロッテワールドが建設されるらしく、2014年に完成する予定とのこと。えげつない高さだ。日本からも見えるんじゃないか?

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▲店内の様子。大きな吹き抜けがあり、日本の百貨店と同じような雰囲気だ。
最上階に食堂街があるところも日本の百貨店と同じだ。こういうのは万国共通なのだろう。ここにも「オーサカ」という名の和食店があり、それとは別に「ハナ」というトンカツ専門店があった。韓国にはトンカツの店が本当に多い。韓国人はトンカツ好きなのか?

百貨店に来たところで特に買う物もないし、旅行の初日に買い物をしたら荷物になってしまうので、とりあえず屋上展望台に行ってみることにした。

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釜山タワー南浦洞国際市場方面。釜山の街が起伏に富んでいることがわかる。

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釜山港国際旅客ターミナル方面。
今朝乗ってきた関釜フェリーが見える。遠くに見える高層アパート群は門峴(ムンヒョン)のあたりか。

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釜山大橋影島(ヨンド)方面。
影島は釜山湾の端に浮かぶ島で、影島区という一つの区を形成している。昔はここにも路面電車が走っていたようだ。この島の南端にある太宗台(テジョンデ)というところはとても景色が美しいらしく、晴れていれば日本の対馬が見えるそうだ。時間があれば行ってみたかったが、結局行けずじまいだった。

この後エレベータで1階に戻ったのだが、なんとこの百貨店、地下6階まであるようだ。地下1階はいわゆるデパ地下の食料品店だが、地下2階より下は全て駐車場とのことだ。

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▲ロッテ百貨店の前で。透明な壁で覆われた部屋の中に本物のトラが2匹。どうやら寅年を迎えるにあたって縁起担ぎをしているようだ。


朝からディープな街歩きをして、かなり時間が経ったような気もするが、これでもまだまだお昼前。次回は釜山の昔からの中心街である、南浦洞・国際市場・チャガルチ市場を歩きます。

(続く)
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Comment

年賀状、ありがとうございました。(韓国は旧正月の国やから、年賀状ではない!?)
まあ、なんといってもデザインがすばらしい!良かったです。
キムチ中国産は…(笑)。中国は何でも作りますね。でも、味はやっぱり国内産ですか?
では、アンニョン ヒ ゲセヨ

김밥천국のようなキムパ屋の地位は他の見方をすれば吉野家や松屋と似ていないだろうかと考えます。

トンカツはかなり大衆的で有名な外食メニューですね。 普通はキムパ天国や軽洋食屋でさせることができる洋式トンカツだが,いつの間にやら日本式トンカツも大きく流行しています。 大部分フードコートや食堂街には中国飲食店とトンカツ屋が必ずありますね。

草梁洞のチャイナタウン一帯は行ってみたことはないが,釜山(プサン)駅からみたイメージはなぜか暗い雰囲気でした。 ガイドブックにそのように書いていましたね。 なぜか理解が出来ます。

>Shoopandaさん
喜んでいただけたようで光栄です。韓国でも新暦の正月に年賀状を出す習慣はあるみたいですよ。
本当に中国は何でも作ってますよね。以前、とある友人がオーストラリアで買ってきてくれたお土産がまさかの「MADE IN CHINA」で、複雑な気分でした。

>Tabiperoさん
確かに!まさに吉野家や松屋と同じような位置づけですね。24時間営業の店舗も多いですし。
韓国のトンカツもいつか味わってみたいです。そのうち名古屋名物の味噌カツも流行したりして・・・?
チャイナタウンの一帯は朝早かったこともあり、とてもひっそりとしていました。夜はいろんな意味で「賑やか」になるのでしょう。
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