韓国の鉄道のはなし~電鉄と一般列車

新年早々からいきなりマニアックな話題で申し訳ない。出来るだけ平易な表現で書いたつもりなので、あまり興味のない方もしばしお付き合いいただきたい。

韓国の鉄道は、大きく2つに分けると「一般列車」と「電鉄」がある。日本には無い概念だが、この2つの間には大きな違いがある。

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▲線路と列車。これだけで一つの風景になる。この場所は、映画「チング」のロケ地にもなった。釜山・凡一洞駅近くで。

韓国で鉄道といえば、全国に路線が伸びる国鉄(KORAIL)が中心的な存在で、それとは別に、主要都市には地下鉄が走っている。日本の私鉄に相当するものは(あるといえばあるのだが、話がややこしくなるので)基本的に無いと考えてよい。
前述の「一般列車」というのは、国鉄のほとんどの区間が該当する。この一般列車は、日本のJRとは大きく異なり、基本的に乗る列車(時刻)と座席を指定して切符を買わなければならない。つまり、日本で例えるなら特急しか走っていないようなものである。このことからも分かる通り、一般列車というのは基本的に遠距離利用が前提で、通勤・通学で乗るような人はあまり多くはない。駅間距離も長いところが多い。

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▲一般列車の一例、ムグンファ号。「汽車旅」という言葉が似合いそうな、旅情を感じさせる列車だ。原州駅で。

一般列車の種別は、速達型のセマウル号と、停車駅の多いムグンファ号とがあり、韓国版新幹線といわれるKTXもこちらの範疇に入る。日本の特急は、路線によっていろんな愛称が付けられているが、韓国では全国どこに行ってもセマウルとムグンファだけである。
停車駅は列車によって異なるが、駅によってはムグンファ号が1日に1往復しか停まらない、というところもある。さらに酷いところでは、旅客列車が1本も停まらなくなってしまった、事実上の廃駅もかなり存在する。路線によっては1日に数往復しか旅客列車が走っていないところもある。日本のJRを基準に考えると、はっきり言ってかなり不便である。それもあってか、韓国では鉄道よりも高速バスの方が充実しており、地方都市では観光客にも高速バスの利用が勧められている。

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▲2009年6月から運行が始まったこのヌリロ号も「一般列車」の範疇に含まれる。龍山駅で。

以上、ここまでが「一般列車」の説明である。では、「電鉄」とは何のことか。

電鉄とは、基本的に、各主要都市に存在する地下鉄のことだと考えればよい。こちらは本数も多く、わざわざ時間や座席を指定する必要もない。日本の地下鉄と全く同じと考えてよい。
ところが、ソウル近郊にだけ、国鉄が営業しているにもかかわらず地下鉄と相互直通しているところがあり、これも電鉄に含まれる。国鉄が営業していると言っても、前述の一般列車のような不便さはなく、制度上は地下鉄と全く同じである。さらに、運賃体系も地下鉄と共通なので、何度乗り継いでも、改札を出ない限り初乗り運賃は1回だけで済む。また、地下鉄と同様に、T-moneyなどの交通カードを使えば運賃が割引になり、バスとの乗り継ぎ割引も受けることができる。
駅間距離は短く、基本的に各駅停車のみだが、一部区間には急行(追加料金不要)も走っている。

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▲電鉄の一例。日本人にとってはこちらの方が馴染み深い雰囲気だ。加山デジタル団地駅で。

そんなわけで、電鉄は地上を走っていても「地下鉄」と呼ぶ人が多く、運営する会社が変わっていることもいちいち気にしない人が多い。また、一山線や果川線のように、ただ国鉄が運営しているというだけで、どう見ても地下鉄の一部にしか見えないところもある。
国鉄が営業する電鉄区間の中には、一般列車と同じ線路を走っているところもあるが、ホームが別々になっているので、乗り継ぐ場合は一旦改札を出て乗車券を買い直す必要がある。


以上を簡単にまとめると、このようになる。

  一般列車 일반열차 電鉄 전철
 国鉄 地下鉄
 運営主体  韓国鉄道公社
 (KORAIL)
 ソウルメトロ
 ソウル特別市都市鉄道公社 
 仁川メトロ
 釜山交通公社など
 路線  京釜線、中央線、湖南線など
 全国に展開
 京釜線、中央線などの一部区間 
 京仁線、果川線などの全区間
 (ソウル近郊のみ)
 ソウル、釜山、仁川など
 主要都市に存在
 乗り方  基本的に時刻と座席を
 指定して切符を買う
 来た電車に乗ればよい。電鉄区間内なら
 改札を出ない限り自由に乗り換えできる
 乗り継ぎ 電鉄と乗り換える場合は
 切符を買い直す必要がある
 一般列車と乗り換える場合は
 切符を買い直す必要がある(国鉄同士でも)
 本数  主要駅は20分に1本程度
 ローカル駅は1日に数本程度 
 主要区間は数分に1本程度
 ローカル区間は1時間に数本程度
 種別  セマウル号、ムグンファ号、
 ヌリロ号、KTXなど
 基本的に各駅停車
 一部区間に急行もあり(追加料金は不要)
 駅間距離  長い 短い
 乗車用途  主に遠距離利用 主に近距離利用
 車両  クロスシートの特急型車両 ロングシートの通勤型車両


ところで、最近では国鉄の「電鉄化」というのが進められている。一般列車しか走っていない既存路線を改良し、電鉄も走れるようにすることである。一般列車と電鉄は運賃体系が異なるので、当然ホームと改札を別々に設置しなければならず、なかなか大変な工事である。ただ、小さな駅の場合は、一般列車のホームを省略し、電鉄専用の駅にしてしまう、というところも多いようだ。

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▲2009年2月に訪れた、京義線の金村駅。撮影当時、電鉄化工事の真っ最中だったが、2009年7月に電鉄が開業した。

さて、なぜいきなりこんな話を語り始めたのかというと、この冬に新たな電鉄化区間が開業し、たまたま開業当日に乗ることができたからである。ちょっと長くなってしまったので、そのことについては次回の記事で紹介することにしよう。

(続く)
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