電鉄中央線 菊秀-龍門間開業(09.12.23)

長い長い韓国旅行の7日目、12月23日。
いきなり7日目の話題から書き始めるのも気が引けるが、この日、私はちょっと特別な出来事に立ち会うことが出来た。

関釜フェリーで釜山(プサン)に上陸し、少しずつ列車で北を目指していた私は、この日は中央線沿いにある安東(アンドン)という街から、最終目的地のソウルに向かうことになっていた。

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▲韓国の国鉄(KORAIL)の大まかな路線図。今回の旅行に関連する路線だけを記載しています。
安東からソウルまではおよそ260kmほどの距離。もちろん直通列車も走っているのだが、今回はKRパス(コリアレールパス)を持っていたので、せっかくだから栄州や堤川といった途中の駅にも立ち寄り、いわば「ぶらり途中下車の旅」を楽しんでいた。
当初の予定では、栄州(ヨンジュ)堤川(チェチョン)原州(ウォンジュ)の3駅にだけ途中下車して、あとはそのままソウル市内に直行しようと思っていた。ところが、ソウル側の末端を走っている電鉄中央線が、この日たまたま延伸開業するということを知った。これは乗らない手はない。

※一般列車と電鉄の違いについては、「韓国の鉄道のはなし~電鉄と一般列車」の記事をご覧ください。

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▲中央線の運行形態図。赤色が一般列車(ムグンファ号)、水色が電鉄を意味する。

清凉里(チョンニャンニ)というのはソウルの中心部にあるターミナル駅で、中央線と京春線という列車(一般列車)の始発駅になっている。東京の上野駅によく似た位置づけである。
中央線沿線のうち、途中の菊秀(ククス)という駅までの区間(約40km)はソウルのベッドタウン化が進み、すでに電鉄が運行されていた。この電鉄は清凉里を通り越し、ソウルの都心を貫いて龍山(ヨンサン)という駅まで直通している。前述の上野駅の例で例えるなら、こちらは京浜東北線のような存在である。その一方、菊秀以東は一般列車しかなく不便であった。
そこで、かねてから改良工事が進められ、ちょうどこの日、菊秀から先の龍門(ヨンムン)駅までの区間(21.1km)が新たに電鉄化されたのだ(ただし一般列車が廃止になったわけではない)。前述の例を用いるなら、大宮が終点だった京浜東北線が大宮以北まで延伸するようなものである。

・・・ということで、前置きが長くなったが、とにかく原州駅から12:57発のムグンファ号清凉里行きに乗り込み、龍門とやらを目指した。

原州を出てからの沿線風景は田舎そのもの。人家もまばらなのどかな風景が続き、ホームも舗装されていないような寂しい駅ばかりだ。
ところが途中の判岱(パンデ)駅のあたりから、少し離れたところに建設中の立派な高架橋が見え始めた。KORAILの路線が電鉄化される際には、曲線を緩和するため別ルートで新線を建設することが多いようだが、このあたりもすでに電鉄化の準備が始まっているのだろう。

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▲判岱駅付近で。こんなのどかなところにもやがて電鉄が走るようになるのだろうか。

判岱の次に通過した楊東(ヤンドン)駅はすでにプレハブの仮駅舎になっている模様で、もともと駅舎があったと思われる場所には新駅舎が工事中だった。
梅谷(メゴク)九屯(クドゥン)石仏(ソクプル)と小さな駅を通過して行き、その次の砥平(チピョン)駅にはすでに新しい駅舎とホームが出来ているようだった。新ルート建設のための資材置き場や、留置線用地のような場所もあり、来年あたりにはこの駅まで電鉄が開業しているかもしれない。

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▲砥平駅。先ほどの楊東の駅前には小規模な商店街があったが、こちらは全くの未開の地。周辺は広大な田園地帯で、集落さえ見当たらない。冬だからなおさら寂しい風景だ。ソウルの都心までは70kmほどの距離だが、これから開発が進むのだろうか。

砥平を出るとすぐに真新しいトンネルに入った。最近出来たばかりのような雰囲気で、どうやらこのあたりはもう新ルートに切り替わっているようだ。そしてそのトンネルを抜けると、いよいよ目的の龍門駅に到着した(13:45)。

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▲龍門駅で。右側が原州から乗ってきたムグンファ号、左側が今日開業したばかりの電鉄(321000系第21編成)。ホームを挟んで向かい合っているが、電鉄の乗り場はこの反対側にあるので、乗り換えるためには一旦改札を出る必要がある。電鉄は折り返し発車待ちをしているようだが、かなり混んでいるようだ。

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▲龍門駅構内。登山にでも来たのか、大勢のお年寄りが続々と電鉄線の改札口から出てきた。

龍門駅にはもともと駅の北側にしか出入口が無かったようだが、電鉄開通に合わせて橋上駅舎化され、新たに南口が設けられたようだ。
まずは南口(3番出口)へ。

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▲龍門駅南口(上)と、駅前風景(下)。

駅舎は新しく斬新なデザインだが、どうやらこちら側は開発途上のようで、駅前には本当に何もない。先ほどの砥平駅のあたりと同じような風景だ。
ということで、反対側の北口(1・2番出口)へ。

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▲龍門駅北口。

こちらはもうお祭り騒ぎ。行き交う人々の表情はみな明るく、「龍門ケトンヘッタ~(開通した)!龍門ケトンヘッタ~!」と嬉しそうに叫んでいるハラボジ(おじいさん)もいる。韓国の人々は感情表現がストレートだ。

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▲龍門駅北口で。

駅前のテントではお茶やコーヒーを配っていて、サムルノリを演奏している人たちもいる。そして駅前通りには、これでもかと言うほどの横断幕が。「歓迎!」 「慶祝!」 「首都圏電鉄龍門駅開業!」 「観光の中心!龍門電鉄駅開業!」 「龍門地下鉄開通をお祝いします!」 「龍門駅電鉄開通をお祝いし、龍門を訪ねてくださった皆様方を心から歓迎します!」などなど。道路の中央にはわざわざ用意したのか、花壇も並んでいる。本当に街を挙げての慶祝ムードだ。今の日本で鉄道の新線が開通しても、果たしてこんなに盛り上がるだろうか?

この後、龍門駅周辺の市街地をしばらく散策し、ついでに京畿龍門郵便局に立ち寄り1000ウォン貯金をした。ただ、龍門駅にはコインロッカーが無く、駅員さんに荷物を預かってもらおうとしても断られた(堤川駅と原州駅では預かってくれたが)ので、大きなキャリーバッグを転がしながらの散策となった。まあ、小さな田舎町なのでそれほど苦にはならなかったのだが。

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▲龍門市街を東西に貫くメインストリート。というより、龍門地区で商店街と呼べそうなのはこの道と駅前通りだけ。本当に小さな田舎町だ。
街の中心部にある子ども服の店では、「自転車」という韓国の童謡(KORAILの電鉄のミュージックホーンになっているあの曲)が流れていた。これも電鉄開業を祝っているのだろうか!?

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▲街外れにはまだまだ田畑が多く、戸建て住宅が中心だが、遠くに高層アパートも見える。徐々にソウルのベッドタウン化が進んでいるようだ。

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▲参考までに、龍門駅で配布していた電鉄時刻表(クリックすると拡大します)。左から龍門発上り(平日/土休日)、清凉里発下り(平日/土休日)。
電鉄化されたと言ってもまだまだ開発途上地域なので、本数は毎時2本程度だ。しかし、ソウル市内のどこにでも行ける電鉄ネットワークに組み入れられたということは、ある意味「都会のステータス」なのかもしれない。
ちなみに一般列車は全て龍門駅に停車するが、それでも毎時1本程度だ。

散策はこのあたりで切り上げ、さっそく開通したばかりの電鉄に乗ってみた。
龍門から、15:25発の龍山行き(321000系第03編成)に乗車。車内はかなりの混雑で、そのほとんどがお年寄りだ。暇つぶしにソウルからわざわざ乗りに来たという方が多いようで、わいわいがやがやと賑やかだ。
車窓は特にこれと言った特徴もない田舎の風景が続いたが、立派な高架橋に複線電化の線路が続き、いかにも高規格であることがわかる。カーブが多かった路線を改良したのだろう。この区間は一般列車と電鉄が同じ線路を走るため、両方が停まる駅では、各駅の前後で電鉄用と一般列車用の線路が分岐する形態になっていた。
このまま乗っていけばソウルの都心まで行くことができるが、こちらは2つ目の楊平(ヤンピョン)で下車した(15:35)。

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▲楊平駅の電鉄ホームと、乗ってきた龍山行きの電車。

楊平駅は、今回の電鉄開通区間をすっぽりと含む楊平郡(ヤンピョングン)の中心地にあたり、駅の周辺はそこそこ賑やかなようだ。ぱらぱらと下車客がいたが、乗車客はかなり多く、この調子だとソウルの都心に着くころには超満員になりそうだ。
ちなみに、ソウル市内の地下鉄5号線にも楊坪(ヤンピョン)という駅があるのだが、ハングルで書くとどちらも全く同じ綴り(양평)なので、路線図では「양평(中央線)」「양평(5号線)」と区別して掲載されていた。楊平駅が一般列車のみだった頃はほとんど問題なかっただろうが、どちらも首都圏電鉄のネットワークに含まれるようになってしまったので、今後どちらかの駅名が変更される可能性もあるだろう。

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▲楊平駅新駅舎。龍門と同じく、駅前には横断幕の数々が。アドバルーンまで上がっている。「長らく郡民の念願だった電鉄開通をお祝いします」などと書かれ、地域住民にとってどれだけ大きな出来事なのかが窺える。

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▲駅舎内から眺めた楊平駅前風景。
楊平郡の中心地だけあってそこそこ都会だ。駅前は工事中のところが多いが、再開発でもするのだろうか。

さて、この楊平駅にもコインロッカーが無く、荷物も預かってもらえないとのこと。車窓から賑やかそうな市場が見えたし、ソウル近郊の小都市ということでぜひ散策してみたかったのだが、そろそろ疲れてきたし、寒いし、日没も近いので、今日はこのままソウルに向かうことにした。ムグンファ号(一般列車)の清凉里行きが約30分後にあるようなので、KRパスで座席指定券を発行してもらった。

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▲参考までに、楊平駅で配布していた電鉄時刻表(クリックすると拡大します)。左半分が上り(平日/土休日)、右半分が下り(平日/土休日)。
龍門駅と同じく概ね毎時2本程度の運行だが、楊平以西には平日の上りのみ朝に2本急行(급印)が運行されるようだ。停車駅は両水、陶深、徳沼、陶農、九里、回基、清凉里、往十里、玉水、西氷庫、二村、龍山と書いてある。追加料金は不要だ。

この後、賑やかな電鉄のホームとは対照的にひっそりとした一般列車のホームから、16:01発のムグンファ号清凉里行きに乗り、ソウルの清凉里に向かった。
楊平を出ると、電鉄しか停まらない我新(アシン)駅を通過。一般列車しか走っていなかった頃はひなびた雰囲気の小さな駅だったようだ(Tabiperoさんのレポート)が、今では他の電鉄駅と同じような近代的な建物になっていた。また、楊平と我新の間には梧浜(オビン)という新駅も建設されるようで、建物はすでにほとんど出来上がっているようだった。
このあたりはソウルの母なる川である漢江に沿って走るのだが、電鉄化に際して線路が新ルートに切り替えられたため、柵とトンネルばかりの景色が続いた。便利さと引き換えに、美しい車窓は失われてしまったのだ。

我新の次は、今まで電鉄区間の終点だった菊秀駅を通過。と言っても、菊秀まで電鉄化されてからまだ1年しか経っていないので、駅前はまだまだ未開発の田園地帯だ。
菊秀駅を出てしばらくすると、朽ち果てた線路が左の方にカーブして伸びていくのが見えた。どうやらこれが漢江に沿って走っていた旧線のようだ。このあたりから先は、漢江が一瞬見えてはトンネル、また見えてはトンネル、という景色が続いた。

さて、ムグンファ号はさらに走り、夕暮れのソウルの街に少しずつ近付いていくのだが、そのことはまた別の機会に書くこととしよう。
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Comment

中央線は原州(ウォンジュ)まで複線化および線路改良が予定されています。 かと言って首都圏電車が入ってくるということなのかと思えばそれはよく分からないでしょうね。

以前に中央線ムグンファ号に乗れば楊坪(ヤンピョン)と龍門(ヨンムン)でだいぶ多くの人々がおりた思い出します。 もうこういう需要が電車に集まることになって,龍門(ヨンムン)から出発した電車が徳沼(トクソ)に行く前すでに満席になるといいます。 相対的にムグンファ号で長距離を移動するのが楽になりそうですね。

事実楊平郡(ヤンピョングン)付近はソウルの上水源で開発が制限されています。 これからどれくらい開発が成り立つかは事実未知数ですね。

うれしいというように大声を張り上げていたおじいさんの話は今見てもおもしろいです。 首都圏電鉄は老人に限り無賃であるからもう気楽にソウル旅行をすることができますね。 以前天安(チョナン)まで首都圏電鉄が開通した時にもこういう無賃券による収益性悪化が論議になったりもしていました。

原州はソウルから大体100kmくらいですね。韓国の通勤事情がどんな感じかわかりませんが、東京や大阪ならぎりぎり通勤圏といったところでしょうか。
車窓から見た感じだと、龍門-原州間には市街地らしい市街地がほとんど見当たらなかった(唯一楊東に小さな商店街があったくらい)ので、電鉄化は砥平あたりで打ち止めかもしれません。実際、乗客の一人の方が「電鉄化はせいぜい砥平までだろう」という旨のことを言っていました。

なるほど、それでお年寄りが多かったんですね。龍門から温陽温泉まで200km近い距離が無賃で行けるとは、本当に太っ腹な話。さすがはお年寄りを大切にする儒教の国ですね。
名古屋市にも同様の「敬老パス」というのがあるんですが、こちらは名古屋市内の地下鉄とバスしか使えないので、端から端まで行ってもせいぜい30km程度です。
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