散りゆく秋を惜しんで・2―近江・湖東三山(百済寺・金剛輪寺)へ

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 ▲百済寺の庭園本坊で。ほとんど散りかかっていた紅葉だが、何とかギリギリ間に合った。

前回の記事で紹介した祖父江・養老を訪れた翌日は、滋賀県の紅葉の名所、湖東三山(ことうさんざん)に行ってきた。
湖東三山とは、鈴鹿山脈の麓に位置する3つの天台宗の寺院、百済寺(ひゃくさいじ)・金剛輪寺(こんごうりんじ)・西明寺(さいみょうじ)のこと。滋賀県というところは意外と歴史ある名刹が多く、文化財としての価値や見どころの多さは京都や奈良にも引けをとらないほどだ。今回は時間の都合で百済寺と金剛輪寺のみの訪問となったが、いずれも風情ある素敵なお寺で、紅葉だけでなく他のシーズンにもぜひ訪れてみたいところだ。
さて、まずは東近江市にある釈迦山百済寺へ。聖徳太子の御願により西暦590年に創建されたという、近江国最古の寺院だ。名前から分かる通り、朝鮮半島にあった百済国と深い関連を持ち、百済の龍雲寺にならって建てられたと言われている。中世までは大変な隆盛を極めた寺院だったが、1573年に織田信長によって焼き討ちにされ、境内は全焼。そのため、現在残る建物はほとんどが近世以降に再建されたものである。

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 ▲表参道。このあたりは石垣など、織田信長にめちゃくちゃにされる前の遺構が辛うじて残っている。
残念ながら紅葉はほとんど散ってしまっていたが、参道が真っ赤な絨毯で覆い尽くされたようで幻想的だ。

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 ▲脇参道(なだら坂)の紅葉。色褪せた葉のパステルカラーがまた美しい。

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 ▲長い参道をしばらく登ると、江戸初期に再建されたという仁王門が見えてきた。
この仁王門をくぐると、やがて巨大な本堂がすっと浮かび上がるように見えてくる。

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 ▲百済寺の境内には、和紙の原料となる三椏(ミツマタ)の木が群生している。
これは本尊の別名「植木観音さま」に由来するそうで、聖徳太子の十七条憲法「篤く三宝(仏法僧)を敬うべし」にも因んでいるという。

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 ▲しばらく登ったところから見下ろす仁王門。木漏れ日が温かくて気持ち良い。

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 ▲そして本堂(重要文化財)へ。現在の建物は1650年に再建されたもの。
かつてはこの奥に、現在の4倍もの大きさの旧本堂が建っていたという。信長に目を付けられるくらいだから、きっと昔はとてつもない大寺院だったのだろう。

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 ▲最後に、「天下遠望の名園」とも称される本坊「喜見院」の庭園へ。
紅葉の見頃は終わってしまっていたが、それでも風情のある庭園だ。きっと冬景色も美しいことだろう。

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 ▲庭園の遠望台から眺めた湖東平野。
一番奥にうっすらと見える尖った形の山は、天台宗の総本山である比叡山。その山裾には、かすかに琵琶湖の水面が見える。そして、比叡山の奥には、渡来系の人々が望郷の念を抱いていた母国、百済があった。はるばる海を越えて日本に仏教をもたらした彼らは、一体どんな気持ちでこの風景を眺めていたのだろう…。

百済寺とはこのあたりでお別れ。せっかくなので、駐車場の土産物屋で近江名物の丁字麩を買って行くことにしよう。

そしてこの後は、8kmほど離れた愛知郡愛荘町にある松峯山金剛輪寺へ。こちらは聖武天皇の勅願により、741年に行基が開山したと伝えられる寺院だ。湖東三山の中では真ん中に位置し、広い道路が整備されて、交通の便も良さそうなところにある。

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 ▲まずは黒門(惣門)から赤門にかけて続く参道を。
ここ金剛輪寺の紅葉は、血で染めたような真紅に染まることから「血染めの紅葉」と呼ばれている。ただ、残念なことに、この時点で大半が散ってしまっていたようだ。落ち葉の色を見ればいかに深く燃えるような赤だったかがよく分かり、それだけにタイミングを逸したことが何とも悔やまれる。

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 ▲安土桃山時代から江戸末期にかけて整備された、本坊「明壽院」の庭園
ここも紅葉はすっかり散ってしまった後だったが、真っ赤に染まった池がちょっと不気味なまでの美しさを見せている。

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 ▲人々を感動させた無数の紅葉も、池の水に沈んだ後ははかなく土に還るのだなあ。これも諸行無常か。

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 ▲明壽院の庭園は立体的な斜面に造られており、鬱蒼とした森の中を抜ける散策路も設けられている。
時刻は4時、もう日が陰ってきた。暗くならないうちに先を急ごう。

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 ▲森の中の道を歩いていたら、突然おびただしい数のお地蔵様に出会った。千体地蔵さまだ。
このお地蔵様は全てが個人のもののようで、一体一体に家の名前が彫られていた。鮮やかな色彩のかざぐるまと、燃えるような紅葉。何だか夢を見ているような景色だ。

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 ▲ここから先も、両脇にお地蔵様が向かい合う参道が延々と続く。
百済寺の参道と比べるとかなり長く、高低差もある。どんどん日が陰ってきて気が急く。

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 ▲やがて、室町時代中頃に建立されたといわれる二天門(重要文化財)が見えてきた。
もとは楼門だったのが、のちに2階部分が取り払われたという、一風変わった門だ。

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 ▲そしてその奥に本堂「大悲閣」(国宝)。1288年に、元寇の戦勝記念として建てられたものだ。
気が付けばもう4時半。日が暮れたからか、それとも標高のせいか、急に寒くなってきた。

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 ▲本堂前で。今年の紅葉はもうこれで見納めだろう。

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 ▲紅葉と同時に桜も咲いていた。秋から春まで咲き続ける不断桜だ。

再び長い参道を下ると、ちょうど拝観時間が終わる5時だった。もはや人影も少なく、境内は静寂に包まれていた。

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 ▲帰り道、夕陽が飛行機雲に反射して不思議な光景を作り出していた。

秋の湖東三山(のうちの二山)めぐりはこれで終わり。何だか心が洗われた一日だった。
来年こそは、ぜひ紅葉のシーズン真っ直中に訪れてみたいが、四季折々の景色もそれぞれまた違った美しさがあるようなので、季節を問わずいつでも気軽に訪れてみたい。
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Comment

西明寺はカットされましたか~。
百済寺と金剛輪寺は行った事があるので西明寺を楽しみにしてたんですが(笑)
以前紅葉の最盛期に行きましたが、ものすごい車と人でしたよ~。
朝一で永源寺に行ったところまではスムーズだったんですが、次に百済寺に行った時には既に駐車場渋滞でした…。
心が折れて血染めの紅葉まで見られなかったので、こちらで拝見できて良かったです。

>ねじまきさん

時間があれば西明寺にも行きたかったんですが、八日市ICを出発して一番遠かったこともあり、残念ながらパスしてしまいました。
次回こそは西明寺にも行きたいです。
紅葉の最盛期はそんなに凄いんですか。ちょっとあなどってました。今回はピークを外して、しかも平日だったからこそ、落ち着いて参拝できたのかもしれませんね。
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