秋の木曽路で街歩き―日本一の宿場町・奈良井宿篇

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 ▲中山道67宿の一つ、奈良井宿(ならいじゅく)
中山道最大の難所といわれる鳥居峠に隣接し、峠越えにそなえて宿をとる旅人が多かったことから、江戸時代には「奈良井千軒」と呼ばれるほど賑わったという。

久々の更新となる、秋の木曽路シリーズ第二弾。
前回の記事では岐阜県の中津川を紹介したが、その後は長野県塩尻市の奈良井宿を訪れた。馬籠宿や妻籠宿など、近隣の宿場と比べるとやや知名度は低いが、風情ある街並みは高く評価され、私もずっと前から訪れてみたいと思っていたところだ。最近は、2011年上期のNHKの連続テレビ小説「おひさま」のロケ地になったことでも知られている。
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 ▲まずはJR中津川駅からスタート。名古屋から奈良井へは、通常この駅で乗り換えることになる。
中津川までは名古屋の通勤圏なので10両編成の快速列車が走っているが、ここから先は完全にローカル線。本数も少なく、特急を除けば2両か3両の短編成ばかりだ。
乗ったのは、右手に見える115系長野色の普通松本行き。平日なのに旅行客や登山客が多く混雑していて、完全に行楽路線といった雰囲気だ。険しい山中を揺られること約1時間半、ようやく奈良井駅に到着した。

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 ▲JR奈良井駅。こぢんまりとした駅舎がどこか懐かしい感じだ。
観光地だが特急は停まらず、各駅停車が2時間に1本ほどの割合で停まるだけの、超ローカル駅。しかしかなりの人数がここで降りたようで、列車が到着した直後の構内はとても賑やかだ。平日でこれだから、休日はもっと混雑するのだろう。どうせなら名古屋から臨時快速を走らせるか、せめて編成を長くしてほしいものである。

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 ▲駅前風景。そば屋がぽつんと1軒営業しているだけ。こうして見るとやっぱりのどかだ。

さて、目的地の奈良井宿は駅からもう見えている。100mほど南に歩くと、そこはもう宿場の入口だ。
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 ▲急にタイムスリップしたような光景。ここは通称「下町」と呼ばれているところだ。
奈良井の宿場は、駅に近い側から順に下町(しもまち)中町(なかまち)上町(かんまち)と3つの町内に分かれ、約1kmにわたって続いている。この3つの町内は重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

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 ▲下町で。昭和レトロな電気店の看板もまた良い感じ。
写真は人が少ないタイミングを狙って撮っているが、実際はもっと観光客だらけ。それでも商売っ気を感じさせないところが奈良井宿の良いところだ。

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 ▲下町をさらに南に進んだところ。「道中おやき」の暖簾に心を惹かれる。
信州らしく、おやきや蕎麦などのお店が目立つ。他にも、塗り物や曲げ物といった伝統工芸品を中心とする土産物屋、そして宿場町らしく民宿や旅館なども多い。

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 ▲上の写真のあたりから、来た道を振り返って見たところ。ゆるやかな坂道になっているのが分かる。
ここ奈良井宿は、全国に先駆けて街並み保存運動が始まったところらしい。街を歩いていると今も、地元の方々の街並みに対する愛着とこだわり、そして熱意が伝わってくる。

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 ▲右手前に大きく写っている杉玉は、地酒「杉の森」の蔵元、杉の森酒造さん。
近世から酒造業を営んでいるという歴史あるお店で、現在の建物は明治初期に建てられたもの。裏手には煙突もあり、宿場の景観にアクセントを与えている。ああ、美味しい地酒が呑みたい。

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 ▲しばらく進み、「横水」の水場を過ぎると中町となる。
ここ中町はその名の通り、宿場の中央に位置する街。かつては本陣、脇本陣、問屋などがあったようで、宿場の中枢を担っていたことが分かる。

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 ▲このあたりは一般の民家も多い。観光地であると同時に、普通の人々の生活の場所でもあるのだ。

ここで、街道から少し裏手に入ったところにある奈良井郵便局に立ち寄り100円貯金。街道筋から一歩奥に入っただけでとても静かで、セミの声しか聞こえてこない。本当に自然豊かな山里なのだ。

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 ▲再び街道に戻り、引き続き中町で。このあたりは越後屋、伊勢屋など、老舗の旅館が集まっている。

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 ▲中町で。右手中央には、国指定重文の手塚家住宅がある。
手塚家は、江戸初期から明治時代まで奈良井宿の問屋を営んできた商家。現在は上問屋史料館として内部が公開されている。

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 ▲中町を過ぎると、古い宿場町にはよくある、クランク状のカーブがある。
中津川では「枡形」と呼ばれていたものだが、ここ奈良井では「鍵の手」と呼ばれているらしい。この鍵の手を過ぎると「上町」となる。

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 ▲上町。鉄道駅から遠いためか、ここまで来ると観光地色が薄れ、素朴な風景が続く。
左手前には、天保年間(1830~1843)に建てられたという中村家の住居がある。実は1968年に、この建物を遠く離れた神奈川県の日本民家園に移設しようという話が持ち上がったことがある。その際、地域住民から「この建物は宿場内にあってこそ価値がある」との声が上がり、移設計画は白紙になったのだという。この問題をきっかけに、奈良井宿では街並み保存の気運が高まり、そのまま現在に至るそうだ。

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 ▲連続テレビ小説「おひさま」のロケ地になったのも、ちょうどこの上町あたり。
ドラマの中では昭和初期の安曇野の商店街という設定で、学校の通学路のシーンにたびたび登場している。

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 ▲純和風の街並みが続く中に、ぽつんとモダンな洋館が建っていた。
おそらく昔の医院だろう、と思って調べてみたら、やはり旧奈良井診療所とのことだ。前述の「おひさま」ではこの建物も、出征兵士を見送る場面で登場しているという。

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 ▲上町の南端、宿場の入口にあたる場所には「宮の沢」の水場がある。
奈良井宿には、北から順に下町、下城、横水、池の沢、鍵の手、宮の沢の計6ヶ所の水場があり、それぞれに組合が組織され維持・管理を行っている。これらは山からの沢水や湧き水を利用して設置されたもので、生活用水として、あるいは火災の延焼を防ぐために使われていたようだ。
その奥に見えるのは、幕府からの法令や規則が掲げられていた高札場。これは1973年に復元されたものだという。

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 ▲さらに南に進み、鎮神社(しずめじんじゃ)の前から見下ろす上町の風景。まるでミニチュアのよう。

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 ▲最後に、宿場とはJRの線路を挟んで反対側に位置する水辺のふるさとふれあい広場へ。
奥には、1991年に架けられた「木曽の大橋」が見える。樹齢300年以上の木曽檜で造られたもので、橋脚のない木橋としては日本一の幅員を誇るという。夜はライトアップされるようで、奈良井の新名所になっているそうだ。
この橋を渡ると、国道19号に面したところに道の駅「奈良井 木曽の大橋」がある。どんなものかと思って行ってみたら、なんと駐車場と公衆電話があるだけ。普通、道の駅といえば売店や食堂や情報コーナーなんかがあるものだが、こんなのでも道の駅に認定されるのか?

そんなわけで、奈良井宿とはここらでお別れ。1時間ほどで軽く見て回るつもりが、のんびりし過ぎていつの間にか2時間以上経っていた。
この後は、奈良井川に沿って2.5kmほど歩き、隣町の木曽平沢に向かいます。
(続く)
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Comment

奈良井宿はまだ訪れたことがありませんが、すばらしい町並みですね!
matchさんのブログは町の雰囲気が良くわかってとても参考になると同時に、
行きたくてたまらなくなります(笑)
中津川~塩尻は青春切符の時期によく乗るせいか、
大混雑のイメージしかなくてちょっと足が向かないんですが、
「これは行かねば」という気になりましたよ。

平沢まで歩かれたということで、次の記事も楽しみにしております。

>ねじまきさん

本当に、もっと注目されても良い、素晴らしいところだと思います。
何よりも、地元の方々の街並みに対する熱意と誇りが、ひしひしと伝わってきました。
きっと、ねじまきさんならもっと素敵な写真を撮ってくださるはずですから、ぜひご訪問されるのを期待しています^^
ちなみに中津川以遠の各駅停車ですが、オフシーズンの平日にもかかわらずかなりの混雑でした。何とかならないもんでしょうかね。
平沢の記事は次の次に更新予定です。お楽しみに。
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