パワーみなぎる新興都市・深圳へ(前編)―国境越え、そして東門老街へ

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 ▲深圳市街東部の繁華街、東門老街
上海の豫園のように、瓦屋根のレトロな街並みが再現されている。奥にそびえ立つビルは世界金融中心。

前回の記事から続く香港旅行シリーズの2日目。この日は丸一日フリーだったので、香港の中心部から35kmほど離れた隣町、中国広東省の深圳(しんせん/シェンチェン)に行くことにした。
ここは中国で5ヶ所指定されている経済特区のひとつで、この数十年で急発展を遂げている新興都市だ。ビジネスはともかく観光で訪れるような人はほとんどいないところだが、中学校の社会の教科書に登場することもあり、そして何よりその急成長ぶりにかねてから興味を持っていた都市だった。
ちなみに前回の記事で、香港は中華人民共和国の一部でありながら政治上は独立国のような存在、という話をしたが、そのために今でも香港と中国本土との間を行き来するには厳重な出入国審査が必要である。

そんなわけで、この日は朝からパスポートを持ってホテルを出発し、深圳方面への列車が発着するMTR東鉄線の紅磡(Hung Hom)駅に向かった。
ホテルから駅までは700mほどの道のり。地図で見ると遠そうだが、歩行者専用の遊歩道と屋根付きの歩道橋で結ばれており、思ったよりも便利そうだ。

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 ▲駅に向かう道中で、九龍半島と香港島を結ぶ海底トンネルが見えた。
トンネルの奥、高層ビルが立ち並んでいるところが香港島だ。郊外から鉄道で来て、ここでバスに乗り換えて海底トンネル経由で香港島に向かう通勤客も多いようで、この近くにはあちこちにバス待ちの長い行列ができていた。毎日こんな大混雑と付き合いながら通勤するのは大変だろう。

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 ▲反対側の様子。時刻は朝8時前、ラッシュの真っただ中で凄まじい渋滞だ。

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 ▲上の2枚の写真を撮った場所は、ちょうど海底トンネルの料金所の真上だったようだ。
ちなみに通行料は、往復で20香港ドル(約200円)。まあまあ手ごろな金額だ。

写真を撮りながらぶらぶら歩いていたら、10分ほどで駅に到着。直通で深圳まで行くことはできないので、深圳の直前に位置する羅湖(Lo Wu)駅まで向かおう。
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 ▲これはMTRの路線図を兼ねた自動券売機。行きたい駅を指で押すと切符が買える仕組みだ。
現在地は、水色(東鉄線)と赤紫(西鉄線)の路線が接続する紅磡駅。そして我々が目指すのは、水色の路線の反対側の終点、二股に分かれているうちの一つ、羅湖駅。香港と呼ばれるエリアはここまでで、その先のグレーになっているところが深圳だ。ちなみに羅湖までの料金は片道35ドル(約360円)。

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 ▲ホームに向かうと、ちょうど8時06分発の羅湖行きが到着したところだった。
ここ紅磡は始発駅なので、紅磡行きとしてやって来た列車が折り返して羅湖行きになる。朝の上りなので混雑した状態で到着したが、折り返しは下りなのでガラガラに空いていた。

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 ▲外観は格好良い車両だが、内装は武骨だ(※この写真は深圳からの帰りに撮影したもの)。
元イギリス領ということもあって、この車両もイギリスのメトロキャメルという会社が作ったものらしい。そう言われると確かに、写真とかで見かけるヨーロッパの鉄道はこんな雰囲気だ。

最初は空いていたものの、2つ目の九龍塘という駅からどっと乗ってきて混み始めた。紅磡駅はターミナル駅ではあるが街外れに位置するため、繁華街やオフィス街へのアクセスは九龍塘で他の路線に乗り換えた方が便利ということらしい。やがて「大學」という駅に着くと学生がどっと降りていき、その後も徐々に空いてきた。


 ▲太和-粉嶺間の車窓風景(動画:1分09秒)。このあたりはニュータウンのようだ。

車内では申し合わせたかのように、ほとんどの乗客が「頭條日報」というフリーペーパーを読んでいた。先ほどの紅磡駅に向かう歩道橋でもあちこちで配布していたが、よほど人気なのか、それともこれしか無いのか。
朝のラッシュなので、都心方向に向かう対向列車は酷い混雑のようで、途中の各駅では日本人も顔負けなくらい行儀良く整列乗車している姿が見られた。一昨年訪れた上海と違って、ここ香港では列車の乗車マナーはかなり良いように見受けられる。

そして、車内がすっかりガラガラになると終点、羅湖駅に到着。
紅磡からの所要時間は約40分。車内には大きな鞄を持った人ばかりが残っていた。まるで空港に着くときのようだ。
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 ▲終着駅、羅湖駅のホーム。
ここは香港-中国本土間の出入境のためだけに設けられた専用の駅で、原則として駅の外に出ることはできない。つまり、ここにいる人たちはみな、これから深圳に行く人ばかりということだ。

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 ▲ホームの端まで延々と歩くと、そのまま「↑深圳」という表示が出迎えてくれた。

空港のような長い通路をしばらく進み、改札を出ると、そこは「羅湖口岸」と呼ばれる出入国検査場。ここでまずは香港側の出国審査を受け、「国境」の川・深圳河に架かる長い連絡橋を渡ると、今度は中華人民共和国側の入国審査となる。飛行機の場合は乗る前に出国審査、降りた後に入国審査を受けるが、ここではこの二つが立て続けにやってくるから何だか妙な感じだ。ただ、幸いなことにそれほど混んでいなくて、これら全ての手続きはおよそ30分ほどで完了した。

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 ▲これにてようやく中国に入国完了!ついに深圳の地に降り立った!
写真は、ここまでの入国手続きを行っていた羅湖口岸の外観。香港と違って簡体字が使われているので、看板には「罗湖口岸」と表記されている。

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 ▲羅湖口岸の向かい側、そこはまさしく深圳の街の玄関口。
大きな広場を中心に、長距離列車が発着する深圳駅や、ショッピングモールの羅湖商業城、香格里拉大酒店(シャングリラホテル)などなど、深圳のランドマークが集まっている。左端に顔を出している黒っぽいビルは、現在深圳で最も高い建物である「京基100」。そして、その右側に見える水色っぽいビルは、建設当初は中国で最も高いビルだった「地王大厦」。数十年前まで小さな漁村だったところがこんな大都市に成長するとは、中国のパワーをひしひしと感じさせる。

さて、まずは深圳を代表する繁華街・東門老街に向かおう。ただ、徒歩ではちょっと遠いので、広場の真下に位置する地下鉄の羅湖(Luohu)駅にやって来た。先ほどの香港側の終点と同じ駅名だが、やはり簡体字で「罗湖」と表記されていて、発音も広東語ではなく普通話だ。ちなみに深圳地下鉄のロゴマークは、香港のMTRのマークに棒を1本足しただけ。パチモンのようだが分かりやすい。
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 ▲羅湖駅の切符の券売機。香港のと同様に、路線図から目的地を選択するタッチパネル式だ。
東門老街の最寄駅である老街駅までは2駅で、運賃は2元(約25円)。香港と比べると格段に物価が安いことが分かる。

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 ▲羅湖駅から、羅宝線9時49分発機場東行きに乗車。まあまあ混んでいる。
2004年に開通したばかりで設備は新しく、駅や車両の雰囲気は、以前に乗った上海の地下鉄によく似ている。

5分ほどで老街(Laojie)駅に到着。新しく広々とした駅だが、構内は迷路のように複雑だ。
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 ▲老街駅にあった周辺案内図。緻密に描かれていて分かりやすい。
中央の赤い部分が現在地の老街駅で、メインストリートの東門歩行街はこの東側にあるようだ。反対側の西の方に行くと、ひときわ高いビルである京基100や地王大厦があるようだ。よし、まずは東門歩行街のあたりを散策してから地王大厦に向かうことにしよう。

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 ▲ということで、まずは東門老街のメインストリート、東門歩行街(歩行者天国)にやって来た。
事前の下調べでは、深圳は香港と違って非常に治安が悪く、スリなどの犯罪が多発していると聞いていたので、もっと殺伐としたところを想像していたが、それほど悪い雰囲気は感じない。むしろ街並みはとても綺麗で、このあたりだけ見ているとかなり洗練された印象を受ける。以前に行った上海と比べても、街を歩く人々の姿は小綺麗だ。香港との違いをしいて挙げるならば、全体的に人々の話し声が大声だということくらいだろうか。

外は非常に蒸し暑く、おそらく35℃以上ありそうな感じなので、東門歩行街沿いにある太陽広場というショッピングモールに寄ってみた。ユニクロを始めとする衣料品店や家電量販店、文具店などが入っていて、雰囲気は日本のショッピングモールとほとんど変わらない。
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 ▲太陽広場の中にある可頌坊(Croissant de france)というカフェでちょっと休憩。
若い女性に好まれそうな、日本にあってもおかしくないような洒落たカフェ。だが、日本語はもちろん英語も一切通じない。仕方ないので、ジェスチャーとノリだけでよくわからないケーキとマンゴージュースをなんとか注文する。変な外国人の我々にも嫌な顔ひとつせず、笑顔で一生懸命何かを伝えようとしてくれた店員のお姉さんにも好感が持てた。なんだ、深圳って良いところじゃないか。
ちなみにケーキとジュースはセットで22元(約280円)。ジュースは常温で全然冷えていなかったが、ケーキはまあまあだった。

さて、いつの間にか雨が降ったらしく、外に出ると道路が濡れていた。
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 ▲太陽広場の北東には、伝統的な建築を模したような商店街があった。
外から見ると普通だが、内部は迷路のように入り組んでいて、奥に進めば進むほど怪しげな雰囲気になってくる。例えて言うなら、ひと昔前の名古屋・大須のアメ横ビルみたいな感じか。iPhoneケースを中心に、偽ブランド品の時計やバッグ、本物かどうか怪しいPSP、本当に使えるのかどうか怪しいUSBメモリなどが所狭しと売られている。
さすがに写真を撮るのはまずそうだったが、いろんな店を冷やかしながら歩くのは面白い。このあたりに来るとけっこう日本語が達者な店員さんもいるようだ。結局、値切りに値切って、カネをドブに捨てた気分でUSBメモリを購入。帰国後使ってみたのだが、一応なんとか使えてます。

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 ▲おまけ。香港で買ったポカリスエット(左)と、深圳で買ったポカリスエット(右)。
香港のは繁体字で「電解質補充飮料 寶礦力水特」、深圳のは簡体字で「电解质补充饮料 宝矿力水特」と書かれている。同じ中国でも、歴史的な背景から文字まで違うというのが興味深い。ちなみに味はどちらも日本のポカリスエットと同じだった。

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 ▲東門老街の散策はここらで終わりにして、次は解放路という幹線道路を西に向かった。
中央のナイフのような形のビルが「京基100」、隠れているがその左に「地王大厦」がある。その下には、高速鉄道CRH「和諧号」が走っている。高層ビルが林立する街中を高架鉄道が通り抜けている様は、名古屋の鶴舞あたりを彷彿させる。

さて、この後は「地王大厦」の展望台から深圳の街を見渡して、さらにもう一つの繁華街である華強路に向かいます。
(続く)
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Comment

おお~、ホンハムですね。
我が家はホンハムに住んでたんですよ~。毎日この駅からMTRに乗って出社してました。懐かしい。

シンセンはまずは老街ですね。
いつ行っても賑やかな町です。
華強路は…?ピンと来ませんが、どこら辺でしょうか…?
ジャスコ(吉之島)があるあたりかな…?次回を楽しみにしてます。

>ねじまきさん

これまたすごい偶然。
あんな便利なところに住んでおられたんですね。

深圳は治安が悪いという予備知識とは裏腹に、とても爽やかな印象の街並みでした。
人々が全体的に裕福になってきたからでしょうか。
華強路というのは、地下鉄羅宝線華強路駅から竜崗線華新駅にかけてのあたりです。
近々更新しますのでお楽しみに。

日本も韓国も陸路で国境を越えることができないから本当になじみがうすい経験だと思います。 厳密に話せばあそこは国境ではありませんが...

私が分かるところでは香港はビザがなくてもかまわないが中国国内はビザが必要なので、ビザ問題はどうなるのか、荷物の検査はすることになるのか気になります。

p.s.)今回スペインに行くことになりながら、日本に行くことは難しいと思うとみられます。 来年晩春や夏程度を考えていますね。知らせられた内容はその時参考にします:)

>Tabiperoさん

空港以外での国境越えは、本当になじみが薄いですね。ただ、私は関釜フェリーで船での国境越えも経験したことはありますが。
中国のビザは、日本人の場合15日以内なら不要とのことでした。荷物も、中身を調べるなどの大掛かりな検査はなくて、本当に気軽な国境越えでしたよ。もっとも、私たちが怪しげな風貌であれば話は違ったかもしれません(笑)

スペインに行かれるとは、羨ましいです!どうぞお気を付けて。
また日本にいらっしゃるときはご連絡ください。
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