忘れ去られた三つの旧道―大府の街歩き

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 ▲開発ラッシュの大府の街も、ここだけ時間が止まっているかのようだ。本町通りで。

しばらく岐阜県のひなびた田舎のシリーズが続いたが、今回は名古屋に隣接するベッドタウン、大府市(おおぶし)をちょっとだけ街歩きしてきた。
ここは10月に訪れた豊明市と同じく、歴史の浅い新興住宅地。古くからの街道も通っていないので、街並みとしては正直あまり期待はしていなかったのだが、思わぬところに昔ながらの風景が残っていて驚いた。こういう意外な発見があるから街歩きはやめられない。
ではさっそく、街の玄関口であるJR大府駅からスタート!
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 ▲まずは大府駅東口へ。大府の街はこの駅を中心に広がっている。
東海道線と武豊線の乗換駅であり、新快速も停車し、名古屋駅までの所要時間はたった15分。これだけ便利なら発展しないはずがなく、1970年の市制施行以降、順調に人口が増え続けている。

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 ▲東口の駅前風景。
ロータリーに沿って雑居ビルが建ち並ぶ、典型的なベッドタウンの駅前の風景が広がっている。少し離れたところに至学館大学(旧中京女子大学)があるためか、若者向けの飲食店も目立つ。

ただ、その割に駅前には目玉となる大型商業施設が1つも無く、どこか寂しい感じがする。後で知ったことだが、現在ホテルアズイン大府が建っている場所には、2000年ごろまで「オスカ」というドミーを核店舗とするショッピングモールがあったそうだ。現在、市内の大型スーパーはいずれも郊外に立地している。他の都市と同様に、この大府も中心市街地の衰退が課題のようだ。

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 ▲大府駅から東に伸びるメインストリート(中央通り)。
道幅は広く4車線もあり、沿道は新しい建物が多い。それもそのはず、この道路は1980年ごろに行われた区画整理で新しく整備されたようだ。

大府駅の周辺はこの区画整理でがらりと街路が変わってしまったようで、昔の地図と見比べてみると全く別の街のように変貌してしまっている。そのため、ただの路地に見えるような裏通りが、実はかつてのメインストリートだったりする。さらに、立ち退きの対象から外れた一角に、冒頭の写真のような古い街並みが断片的に残っていたりする。つまり、じっくり歩いてみないと街の本来の姿が見えてこない。

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 ▲例えばここ。中央通りのすぐ南側を並行する裏通りだが、実はこちらが本来の駅前通りなのだ。
1965年ごろの地図を見ると、あの広い中央通りは影も形もなく、大府駅の正面からまっすぐに伸びているのは紛れもなくこの通りだ。今では営業しているお店も数軒残るのみだが、昔はタウンアーチもある賑やかな商店街だったようだ。

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 ▲続いて、中央通りの「大府駅前」交差点から北に伸びる市役所前商店街
現在はこの通りが大府のメイン商店街になるようだ。この通りもまた、県道50号の旧道にあたる。市役所を挟んだ反対側に伸びる広い県道50号は、1980年ごろに新しく開通したバイパスなのだ。

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 ▲市役所前商店街沿いに建つ大府センター
個人商店がたくさん集まった市場タイプのショッピングモールで、2階以上は住宅になっている。チェーンの大型スーパーにはない温もりと懐かしさがあるが、それにしても年季の入った建物だ。いつごろからあるのだろう?

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 ▲中央通りの「大府駅前」交差点から南に進むと、今度は本町通りとなる。
こちらも市役所前商店街から続く大府のメインストリートだ。この通りも同じく、県道50号の旧道にあたる。写真は「中央町7丁目北」交差点から北を眺めたところ。

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 ▲上の写真と同じ「中央町7丁目北」交差点を、東側から眺めたところ。
この角度から見ると、目の前を左右に横切るのが本町通りということになる。左下に何気なく写っている石柱は大府町道路元標。道路元標については詳しく説明されているサイトがたくさんあるのでここでは割愛するが、ともかく昔はこの場所が大府の街の中心だったことを示している。

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 ▲道路元標の交差点から、今度は西に進んでみた。
本町通りと直交するこの道路にも古いお店がぽつぽつと点在し、昔は商店街だったような名残が感じられる。もしかして、この通りも何かの幹線道路の旧道ではないか?その直感は正しく、1966年に現道が開通するまではこの通りが国道155号だったらしい。
こんなふうに大府の街では、無秩序にバイパスがたくさん造られて、昔からの旧道は活性化されることもなく、放ったらかしのまま、忘れ去られたまま、その役割を終えようとしている。ちょっと寂しいが、これが時代の流れというものか。

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 ▲その旧国道155号沿いに建っていた大府サニーセンター
先ほどの「大府センター」もなかなか古そうだが、こちらはさらに古くて渋い。調べてみたら1964年に、旧町役場の跡地にオープンしたとのこと。東京オリンピックや東海道新幹線開通に日本中が沸いた年であり、この道が国道155号でなくなる2年前のことだ。

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 ▲大府センター、横から眺めるとこんな感じ。
残念ながらほとんどのお店が閉店してしまっているが、建物の脇に連なる飲食店だけは今も営業しているようだ。ここに限らず、駅にほど近いこの界隈は居酒屋などの飲食店が目立つ。かつては華やかな表通りだったのが、いつの間にか影を帯びた裏通りになってしまったということか。まさに哀愁酒場。

さて、再び本町通りを北上して市役所前商店街に戻ろう。「中央町1丁目南」交差点を左折して西へ進み、JRの線路をトンネルでくぐってしばらく行くと、柊山(ひいらぎやま)と呼ばれるエリアに出る。1980年ごろに開発された新興住宅地だ。
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 ▲柊山のメインストリート。住宅街の中にぽつぽつとお店が点在している。
商店街というほどではないが、街路灯には「柊山通振興会」の表示があり、ちょっとした賑わいが感じられる。線路の西側は単なる住宅街だと思っていたが、これはちょっと意外な発見だった。

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 ▲ここまで歩いてきたエリアを地図で表すと、こんな感じになる。

最後におまけ。
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 ▲大府駅と共和駅の中間地点の線路沿いで。駅もないのに謎のロータリーがある。
実はこの地点、10年以上前から大府市が新駅の設置を請願し続けているものの、ことごとくJR東海に却下され続けているようだ。なのに市はもう東側にも西側にもロータリーを整備している。いくら税収の豊かな市とはいえ、ちょっと気が早いような…。
それでも、この周辺は区画整理が進行中で人口増加も見込めるので、新駅構想もあながち無茶な話ではない。今後の発展次第では実現も夢ではないだろう。

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 ▲新駅予定地の近くで見かけた看板。
新しいマンションや新しいお店が続々と建設されている若い街だが、この看板だけはちょっと年季モノのようだ。

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 ▲左上のカタツムリ君がファンキー!
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Comment

わーい、大府センターだ
数年前まで自動車通勤していた頃に
朝晩155号が混むと良くこの裏通りを通って
近道していましたよ

古いおもちゃ屋とか洋菓子屋があって
いい感じでしたが、まだあるんですかね

>9丁目1番地さん

確かに抜け道としては便利そうですね、あの道路。
古い洋菓子屋さんなら上記の道路元標の交差点にありましたが、それですかね?
意外と繁盛したお店が多く、なかなか楽しそうな商店街でしたよ。

洋菓子屋は「みどりや」でした
ココの写真にも出てましたね

季節に合わせた手書きの広告とか飾りつけが印象的でした

めちゃくちゃ嬉しいです!

自分は、45年前、大府市で生まれ、20年ちょい前まで大府に住んでいました。てか今もちょいちょい帰っているのですが。。。記事で述べられているように、駅前の風景ってこの40年でずいぶん変わったんですよね。こちらのブログは「大府 オスカ」で見つけました。オスカって何の略なのか、自分は勝手に「Obu Shoping Center」と思ってましたがそれだと「a」が残る(笑)
主さんの撮られた写真はどれも本当に貴重な「大府の町並み」です。サニーとか何人が覚えてるだろう…みどりやさんはまだまだ人気店です。TVの取材も来ました。
長文すみません。ほんとに嬉しくて。

コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。
大府にはもともとあまり縁がなく、今回も仕事で立ち寄ったついでに街歩きをしてみただけなのですが、こうして地元の方に喜んでいただけると本当に嬉しいです。
旧道から新道に街が取って代わられるというのは、全国どこの街でもよくあることだと思いますが、それぞれの街にはそれぞれ地元の人々のたくさんの思い出があるのだと思います。
そんなことに思いを馳せながら街歩きをするのも、ちょっと切なくていいものですね。
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