揖斐・谷汲へ―晩秋の横蔵寺で紅葉とミイラに出会う

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 ▲横蔵寺の入口、飛鳥川に架かる医王橋

東濃シリーズ南濃シリーズと、この1ヶ月は岐阜県方面への小さな旅が続いていたが、その完結編となるのが今回の揖斐・谷汲編だ。
谷汲といえば谷汲山華厳寺(けごんじ)を思い浮かべる方が多いかもしれないが、今回目指したのは華厳寺ではなく、そのさらに奥にある両界山横蔵寺(りょうかいざん・よこくらじ)。門前町が賑やかな華厳寺とは対照的に、この横蔵寺はひっそりとした山里にたたずむ小さなお寺。ただ、紅葉の名所として知られているため、この時期は多くの観光客が訪れるようだ。
さて、目的地の谷汲に向かう前に、まずは手前の揖斐の街にちょっと寄り道。いつも寄り道ばかりで話が進まないのがこのブログのお約束だが、ともあれ揖斐川町の中心部にあたるこの「三輪」地区は、このあたりではほんのちょっと大きめの街のようだ。
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 ▲最初に立ち寄ったのは地元のローカルスーパー、いびプラザ
トミダヤ(本社:大垣市)が核店舗となっているものの、あくまで地元資本の昔ながらのスーパーといった雰囲気。先月訪れた岡崎のシビコにも似ているが、一昔前から変わっていなさそうな内装が無性に懐かしい。

実はこのいびプラザ、小学生時代に一度だけ祖母と来たことがある。2001年までこの向かい側には名鉄揖斐線の終点・本揖斐駅があり、その名鉄が主催する「100駅スタンプラリー」のついでに立ち寄ったのだ。

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 ▲思い出の名鉄本揖斐駅の跡には小さなロータリーが整備され、バス停になっていた。

それにしても、複雑な名鉄の路線網の中で最も末端部に位置し、大正時代製のオンボロ車両が1時間おきにガラガラで走っていたこの路線には、子どもながらに強い衝撃を受けた記憶がある。当時はとんでもない僻地に来た気がしていたが、こうして改めて再訪してみるとけっこうな街の中だ。養老鉄道(旧近鉄)の揖斐駅と比べてもこちらの方が街の中心部に近く、しかも県都の岐阜市に直結していたのに、こちらの方が廃止になってしまったというのは何とも皮肉なものだ。

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 ▲いびプラザの屋上から眺めた三輪の市街地。
山の懐に抱かれた小さな田舎町だが、その割に商店街はけっこう繁盛していて、上町、中町、下町、上新町、下新町、七間町といった通りがあるようだ。さらに、中心部から少し離れた養老鉄道揖斐駅にかけても長く商店街が続いていて、栄町通り、新栄町通り、溝口通りなどがあった。時間がないのでこの日はクルマでざっと通り過ぎただけだが、ぜひまたゆっくりと再訪したい。

訪れている回数は少ないものの、この揖斐川町には何だかんだで思い入れがある。高校生の頃にも、地理のテストでこの町の瑞岩寺という集落周辺の2万5千分の1地形図を使った問題が出題され、一体これはどこなのかと調べまくって実際に行ってみたこともある。今となっては懐かしい思い出だ。

そんな思い出にふけりつつ、いよいよ本日の目的地である谷汲の横蔵寺に到着。数多くの宝物を有することから「美濃の正倉院」とも呼ばれる古刹だ。伝教大師(最澄)が9世紀初期に創建したといわれ、かの比叡山延暦寺との関連も深いという。
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 ▲横蔵寺入口の駐車場付近で。
門前町というには小さ過ぎるが、ささやかな土産物屋が数軒営業している。きっとこの時期がかき入れ時なんだろう。

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 ▲冒頭で紹介した医王橋を渡り、しばらく進むと寺門がある。
残念ながら紅葉のピークはもう過ぎてしまっているようだ。ただ、言葉ではうまく言い表せないが、境内全体が非常に風情ある景観に覆われていて、本当に来て良かったと実感した。

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 ▲寺門の奥には客殿と庫裏がある。あまり人目に触れないところだが、ここも紅葉が美しい。

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 ▲続いて仁王門(1675年築、県指定重文)をくぐり…

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 ▲三重塔(1663年築、県指定重文)と香堂の脇を進むと…

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 ▲意外にもこぢんまりとした本堂(1670年築、県指定重文)にたどり着く。
この裏手には、忘れ去られたような小さな祠がひっそりと建っている。蔵王三輪社というようだ。

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 ▲本堂の近くで。同じ木の葉でも、紅葉しているのとそうでないのが混ざっていて不思議だ。

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 ▲本堂のさらに奥、観音堂の前にある赤い橋。まるで油絵のような風景だ。

この橋を渡ると、境内の一番奥に舎利堂瑠璃殿(宝物殿)がある。この2つの建物は、共通拝観料300円で内部が公開されている。
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 ▲まずは舎利堂へ(館内は撮影禁止)。
この建物には、妙心法師と呼ばれる人物の即身仏が祀られている。即身仏とは、生きたまま断食修行をしてミイラとなった遺体のこと。1781年にこの横蔵寺の近くで生まれた妙心法師は、諸国巡礼の旅に出た後、1815年に富士山麓にある御正体山(みしょうたいさん)の洞窟で入定(にゅうじょう)を遂げたという。
生きたままミイラ化するには体内の水分を極限まで少なくする必要があり、そのためには厳しい断食の上、漆の汁を飲んで内臓の腐敗を防ぐのだという。想像しただけでも身の毛のよだつような過酷な苦行だ。一体どんな思いで入定に至ったのだろうか。

続いて、舎利堂の隣の瑠璃殿には、仏像を中心とする多数の宝物が展示されている。即身仏を拝んだ後だったのでちょっとインパクトが薄かったが、それでも躍動感に満ちた仏像の造形は見応えがあった。

さて、そろそろ日が暮れてきたので、横蔵寺とはこれでお別れ。
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 ▲来るときにも渡った医王橋。ライトアップで照らされた柿の実がなんだか幻想的だ。

そして最後は、池田町の池田温泉に寄り道して帰ることにした。
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 ▲まずは、今年の夏にオープンしたばかりの道の駅 池田温泉へ。
ぬくもりのある木造建築で、個々のテナントが独立した建物になっているため、商店街のお店めぐりをしているようで楽しい。ただ、気軽に入りづらいという否定的な意見もあるとか。

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 ▲道の駅 池田温泉から眺めた夜景。
クリスマスシーズンに合わせて、イルミネーションもこの日から始まったばかりとのこと。道の駅の割には夜遅くまでやっていて、JAの農産物直売所や足湯などもあり、土産物も充実しているのが嬉しい。

ちなみにこの池田町の中心部には池野商店街というのがあり、昼間にクルマで通り過ぎたのだが意外なほど賑やかで驚いた。今年の年末にはイベントに橋幸夫が来るとのこと。揖斐川町の三輪や瑞穂市の美江寺、神戸町などとともに、またゆっくり歩いてみたいところだ。

道の駅で買い物を終え、いよいよ目の前にある池田温泉本館へ…行くつもりだったのだが、うっかり道を間違えて垂井に至る梅谷片山トンネルに突っ込んでしまい、トンネルを抜けたところの真っ暗闇の峠道でUターンし、往復4キロの無駄な走りをした後、改めて池田温泉本館(▼)へ。
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温泉通の間では絶大な人気を誇るこの温泉、その人気の秘密は豊富な湯量と泉質にあるという。
もともとは町の小さな銭湯といった雰囲気だったようだが、来客の急増に伴いどんどん増築していったらしく、建物も浴場もまるで迷路のように入り組んでいる。狭い上に人が多く、2年前に乗った釜関フェリーの大浴場を思い出したが、確かに泉質はぬるぬるすべすべ。こちらより広くて綺麗な「新館」も隣接しているが、泉質が良いとかでリピーターはほとんどが本館の方を選ぶようだ。

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 ▲館内に設けられた「食事処 グリーンセラ上田屋」で、名物どて煮と稲荷寿司をいただく。
これでもかというくらいご飯がたっぷり詰まった、田舎風の稲荷寿司。これが何とも素朴な味わいで、風呂上がりにはとても美味しい。あまりに気に入って、同じものをもう1皿注文してしまった。

ということで、晩秋の揖斐・谷汲旅行はこれでおしまい。
これから春にかけては仕事が忙しいシーズンに突入し、旅行もブログの更新もなかなかできそうにないが、新緑の時期にまたぜひ来てみたい。
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Comment

おお、わが地元へようこそ!
「いびプラザ」は、当初の正式名称は「揖斐川ショッピングセンター」で、地元民はかつて「いびショッピ」と呼んでいました。この略し方が田舎丸出しですね。
今でこそしょぼしょぼのスーパーですが、昭和50~60年代は書店、レコード屋、おもちゃ屋、スガキヤなどが入り、揖斐川町の文化の殿堂でしたなぁ~。中学時代は、家とは逆方向なのによくここに立ち寄ったものです。

揖斐川町は、親戚が住んでいたこともあり、私にとっても馴染みのある街です。
小さいころから、親と一緒に車や、時には1人で名鉄揖斐線の電車に揺られたりして何回も訪れました。
5月には三輪神社で「揖斐祭り」というお祭りがあるのですが、「子供歌舞伎」に親戚の子が出演した時は一家総出で見物に行ったりしたものです。
ちょっと昔の映画の舞台でも似合いそうな、本当に落ち着いた良い街です。今こうしてコメントをしたためている間にも、街並みが浮かんできました。

>まささん
「ショッピ」という略し方は名古屋特有のものかと思っていましたが、岐阜まで広がっていたんですね。
確かに昔はさぞや賑わっていたんだろうな、という雰囲気は残っていましたが、本当にすごいところだったんですね。今でいうモレラみたいな存在でしょうか。
そうそう、「叙情都市名古屋」購入しました!本当に、今までにないタイプの写真集ですね。我が家の宝にします!

>kumayuさん
揖斐川町にたくさんの思い出があるんですね。
今回はクルマでざっと通り過ぎただけですが、あの街並みは私も本当に印象に残っています。
特に、お菓子のみわ屋さんの前あたりは風情がありますね。個人的には観光地としても十分成り立つレベルだと思います。
いずれ再訪してじっくりと歩き、街並みの写真をアップしたいものです。

いびショッピ、すくなくとも当時は揖斐郡で最大のショッピでした。しかし現在、揖斐川町の商業は大野町や池田町の大型スーパーに食われ、にんともかんとも…。

ご購入、ありがとうございます!!!

揖斐や谷汲も行かずじまいだったのを今更ながらに後悔してます…。
良いですね、いびショッピ。内装も昭和なんだろうな…。
横蔵寺、良いですねぇ。落ち着いた雰囲気が伝わって来るようです。

>ねじまきてつやさん

揖斐も谷汲も、本当に風情があって良いところでしたよ。
いびショッピ、写真はありませんが、内装こそまさに昭和でした。
古い街並みもさることながら、こんなスーパーの売り場の一角の風景に、近頃は強烈に郷愁を感じます。
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