秋雨の飛騨路へ(後編)

種蔵の新そばまつりを楽しんだ後は、帰り道の途中にある飛騨古川の街を訪れた。
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 ▲この日の朝、「飛騨卯の花街道」から眺めた飛騨古川市街。霧で見にくいが、なんだか幻想的な風景だ。

飛騨古川といえば、高山と並ぶ飛騨の二大観光都市。2005年の夏に一度だけみるくさんと訪れたことがあるが、それ以来、実に6年ぶりの訪問となる。ただ、前回は郵便局を巡りながら足早に通り過ぎただけなので、本格的な街歩きは今回が初めてだ。
この記事では、飛騨古川の街の風景を、通りごとにざっと紹介することにしよう。
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 ▲まずは飛騨市役所前の通り(県道476号)。
古川の街は道路が碁盤の目状に直交しているので、構造が把握しやすい。この通りは、市街地の中央を東西に(厳密には北西から南東へ)貫いていて、ルート的におそらく旧国道41号と思われる。市役所や郵便局などの公共施設が多数立地し、自動車の交通量も多く、まさに街の目抜き通りとなっている。

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 ▲飛騨市役所前の通りの1本北を並行する通り。
駅を出てすぐ右手にあたるこの一角は、スナックやバーなどの飲食店が特に集中している。おそらく、昔からの歓楽街なのだろう。

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 ▲こちらは飛騨市役所前の通りの1本南を並行する通り。
町名でいうと「殿町通り」ということになろうか。古川の街の中ではどちらかというと裏通りとして扱われるが、昔ながらの建物がずらりと残り、武家町の風情を残している。あいにくの雨だが、それがかえって街の風情を醸し出していた。

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 ▲瀬戸川沿いの白壁土蔵街。この景観は特に有名で、飛騨古川のシンボルとなっている。
約400年前に農業用水・生活用水として開削されたこの瀬戸川には、現在は1000匹余りの鯉が放流されている。滋賀県の五個荘もそうだったが、古い街並みの水路には本当に鯉がよく似合う。

鯉の餌の麩菓子が100円で売られていたので、試しに買って与えてみた。普通、こういう状況になったら入れ食い状態になるのがお約束だが、なんとこの鯉たち、ことごとく餌を無視し、あるいは食べようとしても空振りで取り損ねて流れていってしまうばかり。雨で水流が速くなっていたせいかもしれないが、本当に鈍臭い鯉たちだ。結局、文字通り100円をドブに捨てることになってしまった。

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 ▲白壁土蔵街の1本南を並行する壱之町通り。ここも歴史的景観が多く残っていて人気がある。
このあたりは、駅に近い側から順に壱之町、弐之町、三之町という町名が付けられている。隣接する高山にも一之町、二之町、三之町という通りがあり、さんまち通りなどと呼ばれて有名な観光スポットになっているが、古川にもあることは意外と知られていない。
このあたりには2軒の造り酒屋が建ち並び、山車蔵も点在していて特に風情がある。雨のせいで観光客はいつもより少なめのようで、のんびりと散策できたのが良かった。

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 ▲壱之町通り沿いにある三嶋和ろうそく店。江戸時代創業の老舗だ。
今では珍しくなった手作りの和ろうそく店で、全ての工程を手作りでやっているのはおそらくこのお店が全国で唯一とのこと。最近は、NHK連続ドラマ「さくら」の舞台となったことでも知られ、ドラマ関連のグッズも展示されている。

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 ▲三嶋和ろうそく店の7代目店主、三嶋順二さん。
ちょうどタイミング良く、作業風景を見せていただくことができた。作業をしながら、和ろうそくの製法や特長について愛想良く語ってくださった。背後の写真にあるように、和ろうそくは風が無くても炎がゆらゆらと揺れ、すすが少なく、そして1本あたりが長持ちという特長があるそうだ。家庭でも使える小さな和ろうそくも販売しているので、お土産に1本購入。

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 ▲続いて、壱之町通りの1本南を並行する弐之町通り
おそらくここが昔からのメイン商店街なのだろう。「いかにも」な歴史的景観が残る壱之町通りも良いが、昭和レトロの生活感が感じられるこちらの通りもまた違った魅力がある。
500m以上にわたって続く長い商店街だが、「弐之町上組」、「弐之町中組」、「栄美会」、「宮城会」などいくつかの発展会に分かれているようだ。写真は大横丁通りとの交点付近で、このあたりは栄美会になるようだ。

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 ▲こちらは弐之町通りのうち、宮城会商店街
宮城会という名前は、宮川に架かる宮城橋に由来しているのだろう。ただ、街路灯の柱には「Welcome 宮城会 がんばろう日本!」と書かれた旗がずらりと並んでいる。「宮城」の名前繋がりで、東日本大震災の復興への祈りを込めているのだろうか。

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 ▲弐之町通りのさらに1本南を並行する三之町通り
高山の三之町と違い、こちらはごく普通の住宅街のようだ。ただ、全体に気品の感じられる建物が多く、ところどころに古い蔵のような建物も残っていて、歴史の重みを感じさせる。

以上、ここまでは東西の通りを順に紹介してきた。続いて、これらの通りと直交する南北の通りを紹介しよう。
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 ▲JR飛騨古川駅と市役所前の通りを結ぶ、飛騨古川駅前通り
奥に見える緑色の屋根の建物が飛騨古川駅だ。古川の街の中では道幅が特に広く、市役所前の通りとはT字に接続していて他の通りと連続していないので、おそらく後から整備された通りなのだろう。
さすがに駅前らしく大きな建物が建ち並び、観光客向けの飲食店やホテルも目立つが、なにぶん列車の本数が少ないため、このときはやや閑散としていた。

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 ▲金森町交差点から今宮橋にかけて伸びる大横丁通り
ここが南北のメインストリートになるようだ。ただ、どちらかと言うと地元の人向けな雰囲気の弐之町通りとは対照的に、こちらは飲食店や土産物屋の目立つ、典型的な観光客向けの商店街になっている。駅前方面から白壁土蔵街・壱之町通り方面に向かう観光客の通り道になっているからだろう。商店街の組織としては、「広小路」、「栄美会」、「三之町上組」など、東西の各通りの発展会に属しているようだ。

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 ▲殿町交差点から霞橋にかけて伸びる通り(県道476号・県道480号)。
通りの名前はよく分からないが、「ひだしん前発展会」との表示がある。殿町交差点以南は、おそらく飛騨市役所前の通りとともに旧国道41号だったと思われる。
殿町交差点以北にも若干ながら商店の集積があり、「県道480号(飛騨古川停車場線)」に指定されているのは、上記の駅前通りではなくこちらの通りである。あくまで推測だが、おそらく現在の駅前通りが開通する前はこちらが駅前通りとして機能していたのではないだろうか。

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 ▲市街地の西端部、壱之町と末広町の間を通る名も無き路地。
奥に見えるのは飛騨市役所(旧古川町役場)。雨に濡れてしっとりとした街並みと、雲の上に顔を出した紅葉の山々が良いコントラストになっている。

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 ▲そして最後に、上人塚(しょうにんづか)を参拝。
白壁土蔵街の脇を流れていた、あの瀬戸川を開削した快存(かいそん)上人を祀るお墓だ。昔から瀬戸川の恩恵をたっぷりと受けてきた古川の人々は、この快存上人を本当に厚く信仰しているようだ。

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 ▲上人塚の周辺は、まつり会館、飛騨の匠文化館などの施設が集まる「まつり広場」になっている。
雨なのでやはりひっそりとしているが、濡れた紅葉がまた美しく、雪吊りが施された松の木もこの街の雪深さを物語っていて、景観に魅力を加えている。

飛騨古川の街とはここらでお別れ。小さな街の中にもさまざまな通りがあり、それぞれに個性が感じられて、歩いていて楽しい街だった。なお、古川の中心部から2.5kmほど離れたJR杉崎駅前の県道476号にも「歌塚通り」という看板があり、そこも若干ながら商店街のような雰囲気になっていた。機会があればまたゆっくりと訪れてみたい。

この後は、朝にも通った県道90号(飛騨卯の花街道)を南下。途中、「道の駅 飛騨古川いぶし」で一休み。夕方遅くだったので売店はもう閉まっていたが、「いぶし銀命水」という地下水が無料で提供されていて、備え付けのコップで飲むことができた。
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 ▲「道の駅 飛騨古川いぶし」からの眺め。眼下の集落が霧に覆われて幻想的だ。

そして最後は「ひだ荘川温泉 桜香の湯」へ。東海北陸道の荘川ICの目の前、「道の駅 桜の郷荘川」に併設されている日帰り温泉施設だ。こぢんまりとした温泉だがなかなか本格的で、中でも「超音波流水システム」はスイッチを押すと物凄い勢いで流水が発生し、手すりに掴まっていないと本当に流されそうになってしまうユニークな施設だ。

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 ▲ひとっ風呂浴びた後は、「桜香の湯」内にある「お食事処 おうか」で「飛騨牛朴葉みそ定食」。
飛騨と言えばやはり朴葉みそだ。山の料理というとなんだか渋いイメージがあるが私は大好きで、どれも美味しくてご飯が進む。無料でおかわりもいただいた。ごちそうさまでした。

ということで、秋雨の飛騨路をめぐる旅はこれにておしまい。
最初はあいにくの雨ということであまり気が進まなかったが、雨の日ならではの良さというものを実感した一日だった。次回は泊まりがけで、ゆったり、ゆっくりと訪問してみたい。
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