秋雨の飛騨路へ(前編)
- 2011.11.11 11:11
- カテゴリ:旅行記-岐阜
先週の日曜は、岐阜県飛騨市宮川町の種蔵(たねくら)という小さな集落を訪れた。人口26人、そのうち18人が高齢者という、超高齢・超過疎集落だ。

▲こんなのどかな風景が広がるところ。
決して有名な観光地ではないし、観光客で大賑わいということもないが、日本の原風景ともいうべきこの素朴な景観は今では貴重なものだ。
そもそもここにやって来た目的は、毎年恒例の「飛騨種蔵 新そばまつり」が開催されていたからだ。このイベント、岐阜大学工学部の地域システム計画研究室が協賛していて、OBのみるくさんも毎年スタッフとして参加されているので、以前からずっと気になっていたのだ。
そんなわけで雨の中、はるばる岐阜県北端部の種蔵の里に向けて出発した。

▲こんなのどかな風景が広がるところ。
決して有名な観光地ではないし、観光客で大賑わいということもないが、日本の原風景ともいうべきこの素朴な景観は今では貴重なものだ。
そもそもここにやって来た目的は、毎年恒例の「飛騨種蔵 新そばまつり」が開催されていたからだ。このイベント、岐阜大学工学部の地域システム計画研究室が協賛していて、OBのみるくさんも毎年スタッフとして参加されているので、以前からずっと気になっていたのだ。
そんなわけで雨の中、はるばる岐阜県北端部の種蔵の里に向けて出発した。
自宅から東海北陸道、飛騨清見IC、そして一般道を経て、種蔵にはおよそ3時間弱で到着。沿道は紅葉がとても綺麗だったが、あいにくの雨であまりよく見えず…。まあ、もし晴れていたら東海北陸道の渋滞が酷かっただろうな、と自分に言い聞かせる。

▲ヘアピンカーブの連続する坂道を上り、種蔵集落の駐車場に到着…すると目の前にはこんな風景が。
右側の建物は搗き屋(つきや)。ししおどしと同じ原理で棒を動かし、その動力を利用して蕎麦粉を挽いているのだそうだ。
さて、駐車場に着いたのは良いが、祭の会場がどこにも見当たらない。案内表示も無く、初めて来る場所で戸惑いながらも200mほど歩いて行くと、大きな建物の周りに人だかりが見えた。どうやらこの「板倉の宿種蔵」の周辺一帯が会場になっているようだ。このアバウトな感じがまたいい。

▲新そばまつりの会場。雨にもかかわらずけっこうな人出だ。
橙色のTシャツを着ているのが前述の岐阜大学のスタッフの方たちで、みるくさんともここでばったり。
ちょうどいい具合にお腹が空いてきたので、みるくさんと、その後輩のにごさんとともに食事をすることになった。余談だが、同じ職場のバイト・Tくんにも偶然会ってびっくり。彼もまた岐阜大学の学生なのだが、まさかこの研究室に関わっていたとは…。世間は狭いものだ。

▲清流の鮎めし、豚肉の串焼き、おでん、そして本日のお目当てである蕎麦をいただく。
この写真には写っていないが、エゴマの味噌を付けたじゃがいもの田楽もいただいた。どれも美味しく、蕎麦もさることながら鮎めしが特に気に入った。ごちそうさまでした。
腹ごしらえをしたところで、せっかくなので種蔵の集落を散策してみることにした。忙しい中、みるくさんがわざわざ案内してくださった。

▲まずは、種蔵の名物である板倉が並ぶ光景。
板倉とはその名の通り、穀物などを保管する板張りの倉庫のこと。種蔵の総世帯数が12世帯であるのに対し、集落内の板倉の数は20棟にのぼる。板倉は昔から住民にとって何よりも大切なもので、「住む家を壊すようなことがあっても倉だけは守れ」と語り継がれてきたのだという。

▲板倉とともに種蔵の名物になっているのが、石積み造りの棚田だ。
この種蔵の棚田、岐阜県選定の「ぎふの棚田21選」に選定されており、さらに環境省選定の「かおり風景100選」とやらにも「種蔵棚田の雨上がりの石積」として選ばれているらしい。もっとも、この日はずっと雨だったので、残念ながら「雨上がり」を体験することはできなかったが…。

▲道なき道をさらに進むと、最上段部にはこんな光景が。立派な石垣はまるで城跡のようだ。
写真ではわかりにくいが、右上の方に大きな岩がある。棚田の石垣はこの岩を爆破させ、少しずつ積み上げて造ったのだそうだ。途方もない作業に頭が下がる思いだ。

▲棚田のてっぺんの一番見晴らしの良さそうところに来た途端、霧に覆われて何も見えず…。

▲しばらくして霧が晴れてきた。雲海が広がりちょっと幻想的だ。山の天気は本当に気まぐれ。
ここまで来る道中は分かりにくく、途中に地図看板が1枚建っているのみで、知らなければ決して足を踏み入れなさそうな険しい道の先にある。せっかくの美しい風景も、多くの観光客は知らないまま帰って行くのだ。
みるくさんによれば、観光客向けの地図付きパンフレットを作るのが目下の課題とのこと。知る人ぞ知る、秘境的なこの雰囲気もまた良いものだが、種蔵の良さを多くの人に知ってもらうことが、棚田や板倉の保存に繋がっていくのだという。

▲棚田から眺めた種蔵集落の全景。遠くの谷間に小さく見えるのは、国道360号の宮川新大橋。
それにしても、観光地として整備され過ぎるのもまた勿体ない気がする。手付かずの農村風景だからこそ感じられる温もりや安心感もあるはずだ。過疎にあえぐ限界集落では、そんな贅沢なことも言っていられないのだろうか。

▲帰りはまた別のルートで。板倉の上に積もったイチョウの黄葉が美しい。

▲ふと足下を見ると、一面に広がる落ち葉もまた可愛らしい。
そろそろ仕事に戻らなければならないみるくさんとはここらで別れ、お腹も心も満たされつつ種蔵の里を後にした。スタッフのみなさん、雨の中本当にお疲れさまでした。
ところで、種蔵では一昨年から、新そばまつりと同時進行で「たねくら携帯写真コンテスト」が行われている。祭の当日に撮った写真を携帯から応募し、ホームページ上で投票してもらって優秀作品を決めるというイベントだ。優秀作品賞は、「種蔵賞」が種蔵宿泊半額券(ペア2組)、「棚田賞」が種蔵体験時お土産券(棚田米3kg×10名)となかなか豪華。みるくさんによれば、応募数が少ないので当選確率はかなり高いとのこと。
というわけで、私もさっそく応募してみた。11月21日から12月4日までが投票期間で、その後入賞作品がサイト上で発表されるとのこと。過去の作品を見るとなかなかクオリティが高く、今年は他にどんな作品が集まるのか楽しみだ。詳細は公式サイトをどうぞ。
種蔵からは以上。この後は、飛騨古川に寄り道してから帰ります。
(後編へ続く)

▲ヘアピンカーブの連続する坂道を上り、種蔵集落の駐車場に到着…すると目の前にはこんな風景が。
右側の建物は搗き屋(つきや)。ししおどしと同じ原理で棒を動かし、その動力を利用して蕎麦粉を挽いているのだそうだ。
さて、駐車場に着いたのは良いが、祭の会場がどこにも見当たらない。案内表示も無く、初めて来る場所で戸惑いながらも200mほど歩いて行くと、大きな建物の周りに人だかりが見えた。どうやらこの「板倉の宿種蔵」の周辺一帯が会場になっているようだ。このアバウトな感じがまたいい。

▲新そばまつりの会場。雨にもかかわらずけっこうな人出だ。
橙色のTシャツを着ているのが前述の岐阜大学のスタッフの方たちで、みるくさんともここでばったり。
ちょうどいい具合にお腹が空いてきたので、みるくさんと、その後輩のにごさんとともに食事をすることになった。余談だが、同じ職場のバイト・Tくんにも偶然会ってびっくり。彼もまた岐阜大学の学生なのだが、まさかこの研究室に関わっていたとは…。世間は狭いものだ。

▲清流の鮎めし、豚肉の串焼き、おでん、そして本日のお目当てである蕎麦をいただく。
この写真には写っていないが、エゴマの味噌を付けたじゃがいもの田楽もいただいた。どれも美味しく、蕎麦もさることながら鮎めしが特に気に入った。ごちそうさまでした。
腹ごしらえをしたところで、せっかくなので種蔵の集落を散策してみることにした。忙しい中、みるくさんがわざわざ案内してくださった。

▲まずは、種蔵の名物である板倉が並ぶ光景。
板倉とはその名の通り、穀物などを保管する板張りの倉庫のこと。種蔵の総世帯数が12世帯であるのに対し、集落内の板倉の数は20棟にのぼる。板倉は昔から住民にとって何よりも大切なもので、「住む家を壊すようなことがあっても倉だけは守れ」と語り継がれてきたのだという。

▲板倉とともに種蔵の名物になっているのが、石積み造りの棚田だ。
この種蔵の棚田、岐阜県選定の「ぎふの棚田21選」に選定されており、さらに環境省選定の「かおり風景100選」とやらにも「種蔵棚田の雨上がりの石積」として選ばれているらしい。もっとも、この日はずっと雨だったので、残念ながら「雨上がり」を体験することはできなかったが…。

▲道なき道をさらに進むと、最上段部にはこんな光景が。立派な石垣はまるで城跡のようだ。
写真ではわかりにくいが、右上の方に大きな岩がある。棚田の石垣はこの岩を爆破させ、少しずつ積み上げて造ったのだそうだ。途方もない作業に頭が下がる思いだ。

▲棚田のてっぺんの一番見晴らしの良さそうところに来た途端、霧に覆われて何も見えず…。

▲しばらくして霧が晴れてきた。雲海が広がりちょっと幻想的だ。山の天気は本当に気まぐれ。
ここまで来る道中は分かりにくく、途中に地図看板が1枚建っているのみで、知らなければ決して足を踏み入れなさそうな険しい道の先にある。せっかくの美しい風景も、多くの観光客は知らないまま帰って行くのだ。
みるくさんによれば、観光客向けの地図付きパンフレットを作るのが目下の課題とのこと。知る人ぞ知る、秘境的なこの雰囲気もまた良いものだが、種蔵の良さを多くの人に知ってもらうことが、棚田や板倉の保存に繋がっていくのだという。

▲棚田から眺めた種蔵集落の全景。遠くの谷間に小さく見えるのは、国道360号の宮川新大橋。
それにしても、観光地として整備され過ぎるのもまた勿体ない気がする。手付かずの農村風景だからこそ感じられる温もりや安心感もあるはずだ。過疎にあえぐ限界集落では、そんな贅沢なことも言っていられないのだろうか。

▲帰りはまた別のルートで。板倉の上に積もったイチョウの黄葉が美しい。

▲ふと足下を見ると、一面に広がる落ち葉もまた可愛らしい。
そろそろ仕事に戻らなければならないみるくさんとはここらで別れ、お腹も心も満たされつつ種蔵の里を後にした。スタッフのみなさん、雨の中本当にお疲れさまでした。
ところで、種蔵では一昨年から、新そばまつりと同時進行で「たねくら携帯写真コンテスト」が行われている。祭の当日に撮った写真を携帯から応募し、ホームページ上で投票してもらって優秀作品を決めるというイベントだ。優秀作品賞は、「種蔵賞」が種蔵宿泊半額券(ペア2組)、「棚田賞」が種蔵体験時お土産券(棚田米3kg×10名)となかなか豪華。みるくさんによれば、応募数が少ないので当選確率はかなり高いとのこと。
というわけで、私もさっそく応募してみた。11月21日から12月4日までが投票期間で、その後入賞作品がサイト上で発表されるとのこと。過去の作品を見るとなかなかクオリティが高く、今年は他にどんな作品が集まるのか楽しみだ。詳細は公式サイトをどうぞ。
種蔵からは以上。この後は、飛騨古川に寄り道してから帰ります。
(後編へ続く)
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ご無沙汰です。
種蔵は、僕が4年生の頃からずっと関わってきた集落で、それなりの想いのある場所です。定義的には限界集落という位置付けにはなりますが、まっちさんが日記に書かれているように、日本の原風景とも言える光景がそこには広がっており、先人が必死に守り育んできたこの種蔵の姿を後世に残すべきだと思っています。
種蔵に住む方も外から来る人が種蔵を訪れ、感動している姿に、自分の住む場所に対しての愛着と誇りを持っています。
僕は、種蔵にはもちろん素晴らしい景色があるのですが、その風景をさらに美しくしているのは、そこで楽しそうに暮らす住民こそが種蔵の風景を織りなすためには欠かせないと感じています。
次にもし、種蔵に行く機会があればぜひ種蔵の方と交流してみて下さい!
きっともっと種蔵が好きになると思います。
以上、長々とすみませんでした。
種蔵の親善大使でもないですが、素敵な日記を書いてくださり、ありがとうございました。