岡崎、八丁味噌のように熟成した街

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 ▲岡崎城の西隣を流れる伊賀川。平和な秋の休日の光景。

ジョニーtownのスープカレーでお腹を満たした後は、岡崎市内をのんびりと街歩きすることにした。岡崎城を中心とした旧市街は、ちょうど8年前の2003年10月24日に初めて訪れたときの詳しい記録が今も残っている。その後も数回に渡って訪れているが、本格的に街歩きをするのはこれで2回目だ。
どうでもいいが、相変わらずジョニーtownの味と雰囲気が忘れられず、脳内ではペドロ&カプリシャスの「ジョニィへの伝言」が無限ループしていた。
さて、最初にやって来たのは、市街地の北端に位置する伊賀八幡宮。松平4代親忠(ちかただ)が、松平家の氏神として三重県の伊賀から勧請したと伝えられる神社だ。あの徳川家康も、出陣の際には必ずここに戦勝祈願をしに来たという。
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 ▲蓮池の奥に随神門(ずいしんもん)と本殿が見える。国指定重要文化財。
現在の社殿は、江戸幕府3代将軍の徳川家光が1636年に造営したもの。この周辺はNHK連続ドラマ「純情きらり」のロケ地にもなったんだとか。

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 ▲続いて、伊賀八幡宮の南に伸びる能見北(のみきた)商店街(旧国道248号)へ。
この道路には1962年まで名鉄岡崎市内線という路面電車が走っていたため、「電車通り」の愛称もある。いかにも地方都市の街外れといった雰囲気で、何だか旅情を感じさせる。

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 ▲岡崎市の道路には、商店街ごとにこのようなデザインの違ったモニュメントがあちこちに置かれている。
写真は能見北商店街のもの。

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 ▲能見北商店街の150mほど西を並行する通り。
商店街というほどではないが、「もとのみ公設」という市場を中心に小規模商店が集積している。どこか懐かしい雰囲気だ。「公設」というのも懐かしい響き。

ところで、この「もとのみ公設」の東側には松應寺(しょうおうじ)というお寺がある。
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 ▲何でもなさそうな小さなお寺だが、案内板を読んでみてビックリ。なんと徳川家康が創建したというのだ。

松應寺にはこんなエピソードが残っている。徳川家康の父・松平広忠(ひろただ)は1549年に岡崎城内で家臣に襲われて無念の死を遂げ、ちょうどこの場所で密葬されたという。当時まだ幼かった家康(竹千代)は、松平家が繁栄するようにとの祈りを込め、父の墓のそばに小さな松の木を植えた。やがて岡崎城主となって故郷に戻って来た家康は、自分の植えた松が大きく成長しているのを見てこの寺を創建し、「松が祈りに応えてくれた」という意味で「松應寺」と名付けたのだ。

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 ▲松應寺の参道。渋いアーケードが設置され、お寺の参道らしからぬ雰囲気。
どうやら、このあたりはかつて花街だったようだ。残念ながら今はほとんどのお店が廃業しているようだが、スナックの看板が1つだけぽつんと残り、当時の名残を留めている。

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 ▲松應寺の周辺にはこんな路地が迷路のように伸びている。

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 ▲続いて、先ほどの能見北商店街から続く本町通りへ。
ここが岡崎の南北のメインストリート。都心に近付いたためぐんと道幅が広くなり、片屋根式アーケードも設置されている。8年前にここを訪れたときは、昔ながらの味わい深い建物があちこちに残っていたとの記録があるが、今はそのほとんどが月極駐車場に変貌している。

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 ▲岡崎市街を東西に貫く康生通り
本町通りが南北のメインストリートなら、こちらが東西のメインストリートだろう。高層建築が建ち並ぶ様子は、西三河の中心都市としての貫禄を感じさせる。

本町通りと康生通りの交点を中心とするエリアは、昔から岡崎随一の繁華街として賑わい、かつてはシビコセルビメルサ(名鉄系)、クレオ(松坂屋)という4つの大型商業施設がひしめき合っていた。ところが、2003年に訪れた時点でシビコとセルビは空きテナントだらけ、メルサは撤退してメルセーズとなっていたもののすでに風前の灯火、松坂屋も地下食料品売場以外は閑散としていて、あまりの寂れように酷く心を痛めた記憶がある。
あれから8年。あの一帯はどうなっているのだろうか。

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 ▲まずはシビコへ。
8年前に来たときは北館・西館・南館(たつきビル)・別館(新天地ビル)の4つがあり、いずれも細々と営業していたものの、2007年についに南館が閉鎖・解体。南館にあった店舗の一部は北館・西館に移転してきたようで、寂しさは否めないものの、それなりにお客さんは入っているようだ。店内の様子はいかにも一昔前のショッピングモールという感じで無性に懐かしさを感じさせる。個性的なお店も多く、何とか頑張ってほしいものだ。
ただ、別館の方はお茶の店と化粧品店がたった2軒だけ営業しているのみ。他は全て空きテナントで、真っ暗で備品もそのまま放置されホコリをかぶり、正真正銘の廃墟になっている。都市の空洞化というのはここまで残酷なものなのか…。

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 ▲セルビ(左)とクレオ(右)。
8年前はパソコン専門店が細々と営業していたセルビだが、今は全面シャッターで封鎖され、郵便局だけが辛うじて営業している(休日なので閉まっていたが)。松坂屋の方は昨年1月に閉店し、こちらも廃墟のままだ。この光景は切ない。
ちなみにこの西側にあったメルサの跡地には、2008年に高層マンションが建っている。松坂屋もまもなく取り壊され、跡地にはマンションを中心とした施設が建つとのことだが、今後の発展に何とか期待したい。

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 ▲参考までに、8年前の2003年10月24日、岡崎城天守展望台から撮影した岡崎市街。
この頃はメルセーズや松坂屋がまだ健在だ。名鉄岡崎ホテルのビルも、老朽化が目立つものの存在感を放っている。

中心部の衰退に心を痛めつつ、今度は岡崎城の西側に位置する板屋町(いたやまち)へ。かつて遊郭があったというこのエリアには、往時の面影を留めた建物があちこちに残っている。このあたりは既に何度か歩いているはずなのだが、今まで全く気付かなかった。
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 ▲板屋町の中央を南北に貫く板屋本通りで。
何も知らなければただの古い建物だが、よく見ると「十八才未満の方がお客さんとして立入ることをお断りします」のプレートが貼ってあり、この町の歴史を物語っている。

この建物には、他にこんな貼り紙も。一体何があったのだろう?
こちらの家屋は諸事情により解体する事ができずにおります 倒壊など大変、危険な状態につき、勝手に家屋の中に入る事を堅く禁じます 万一、家屋倒壊などによる近隣含む事故/ケガなどの一切の責任を負い兼ねますので、十分、ご注意下さい

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 ▲板屋町の中央に建つ、飲食「たつき街」。渋すぎる…。

このように、板屋町には昔の名残で今も飲食店や旅館やビジネスホテルなどが点在している。上のたつき街のすぐ隣にも、洋館のような派手なラブホテルがデーンと鎮座している。8年前に来たときは、岡崎城の真横の閑静な住宅街にこんな場違いなものを建てやがって、と腹立たしく思ったものだが、この立地にはきちんとした由縁があったのかもしれない。

さて、そろそろ日が暮れてきたので、乙川沿いを散策しつつ、名鉄東岡崎駅に向かうことにした。
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 ▲明代橋から眺めた夕暮れの乙川と岡崎市街。遠くに岡崎城が見える。

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 ▲名鉄東岡崎駅北口。1958年築の岡ビル百貨店が併設されている。
旧市街はちょっと衰退気味で寂しかったが、乙川以南は駅に近いこともあり、人通りも多く賑やかさが保たれている。

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 ▲東岡崎駅北西の高架沿いの風景。
実はここにも「明大寺横丁」というレトロな飲食街があると聞いていたのだが、既に更地になっていた。8年前に来たときはその存在すら気付かなかったので、結局行けずじまいになってしまった。しかし、こんな狭い敷地でよく何軒も営業していたものだ。
知立駅の近くにあった「麗人街」も、いつも電車の車窓から見えるたびに気になっていたのだが、気が付いたら取り壊されていた。気になるスポットは早めに行かないと、無くなってしまうとあっけないものだ。

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 ▲最後に、東岡崎駅に併設された岡ビル百貨店をのんびりと探索。
初めて来たはずなのに、無性に懐かしく感じるのはなぜだろう。年季の入った建物だが、2階の書店は駅直結という便利さから意外と賑わっていた。飲食店も数軒入っているようだが、3階は営業時間外だったためか閉鎖されていた。
この岡ビル百貨店も、まもなく取り壊される予定とのこと。訪問はお早めに。

8年ぶりに歩いた岡崎の街。クルマ社会の西三河にあって、駐車場が確保しにくく駅からも中途半端に離れた中心街は、かなりの苦戦を強いられている。とはいえ、新興都市には決して真似できない歴史の重みがにじみ出ていて、それこそが岡崎の魅力なのだと実感した。
八丁味噌のように、こってりと熟成した街。いずれまた改めてじっくりと訪問してみたい。
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Comment

岡崎市民のぞうまさです。

市内の紹介ありがとうございます。

セルビ、クレオの西側には図書館交流プラザが新しくオープンしています。この施設の利用者は多く、いつも賑っていますが、周辺の賑わいにはつながっていっていないようです。

古い岡ビル百貨店の姿は何かなつかしい感じです。 その他にも市内の衰退したデパートは行ってみなくてもその雰囲気を分かりそうですね。

私が近江八幡駅でたこ焼きを食べたデパートがそのような感じだったかも知らないです。記事の雰囲気までは違いましたがデパートにふさわしくなく物静かでそれなりに維持されていく感じです。

それもまた、それなりの情緒を呼び起こすが後日にはもう少し活気に満ちる都市の姿を期待することになりますね。

>ぞうまささん
岡崎にお住まいだったんですね。
確かに、セルビの西側に真新しい施設があるのが見えました。もともとはスポーツガーデンがあった場所ですよね。
我が一宮市も、駅前に図書館を中核とする複合ビル「i-ビル」を建設しているところですが、周辺の活性化には繋がるのでしょうか…?

>Tabiperoさん
岡ビル百貨店のあの懐かしさは、国境を越えて感じていただける普遍的なものだったんですね(笑)
近江八幡駅というと、北口にある平和堂のことでしょうか?私も何度か行ったことがありますが、あそこも一昔前の懐かしさがありますね。
近江八幡の場合は、南口に新しくて巨大なマイカルがあるので、そちらに賑わいを奪われているという面もあるのでしょう。郊外が賑わって中心部が衰退するという現象は、今や日本中で問題になっています。

平和堂が合うようです。 地図には近江八幡ショッパズ スクエアと書いているので、平和堂で検索すると出てきますね。

南口側に大きなショッピングセンターがあるのを見たが、駅を横切って行くのが面倒になってそのまま平和堂で買い食いをしました。 駅前にもかかわらず閑静だったことはそのためでしたね。
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